乳幼児のコロナワクチン接種 専門家「丁寧さ重要」/保護者「不安と期待」

米ファイザー製の生後6カ月から4歳の乳幼児を対象とした新型コロナウイルスワクチン

 生後6カ月~4歳の乳幼児を対象にした新型コロナウイルスワクチンの接種が長崎県内でも11月上旬から各市町で順次始まる。専門家は「有効性は高い」とする一方、医療現場での混乱を懸念。保護者からは期待と不安の声が聞かれた。
 乳幼児用ワクチンは米ファイザー製。5~11歳と、12歳以上用の同社製ワクチンは計2回で初回接種となるが、乳幼児用は計3回で初回接種完了となる。1回目から3週間後に2回目。さらに8週間以上経過後に3回目を打つ。有効成分の合計量(3回分)は5~11歳(2回分)の半分、12歳以上(同)の6分の1。
 小児科医でワクチンに詳しい長崎大学病院の森内浩幸教授は現在流行中のオミクロン株に対する乳幼児用ワクチンの有効性について「発症予防と重症化予防のどちらにも期待できる。副反応は許容できる範囲」と話す。オミクロン株に置き換わった第6波以降、子どもへの感染も大幅に増加。結果的に重症例や死亡例も増え、「基礎疾患がある子どもや2歳未満は特に注意が必要」と接種を勧める立場だ。
 厚生労働省が公表しているデータによると、3回接種後の発症予防効果は約73%。一方で1~3回接種後7日間に現れた副反応は、生後6カ月~1歳は▽発熱が約7%▽接種部の腫れが約4%▽機嫌が悪くなるケースが約5割▽食欲減退が約2割。2~4歳は▽発熱が約5%▽接種部の腫れが約3~6%▽頭痛が約5%▽ずきずきうずくような痛みが約3割-などとなっている。

 森内教授は乳幼児への接種には「特に丁寧さが重要。打ち手はできるだけ小児科医が望ましい」とする。その一方で「乳幼児はほかのワクチン接種も多い上に風邪をひきやすい。接種のスケジュールが予定通りに進まないことも多いのではないか」と懸念する。
 また「保護者の不安は子どもに伝わる。かかりつけ医に相談し、納得してから受けることが大切」とも指摘。さらに「新型コロナによる医療逼迫(ひっぱく)が原因で通常なら救える命が救えなかったケースもある。再び感染が拡大する前に受けてほしい」と話した。

 保護者の受け止めはさまざまだ。育児休暇中で生後6カ月の子どもがいる長崎市内の女性(32)は自身が副反応で苦しんだ経験から「まだ6キロしかなく副反応が心配。今すぐ受けさせることはない」。ただ4月に復職し保育園に預ける予定で「効果が高いならそれまでに受けさせたい思いもある」と複雑な胸の内を明かす。
 生後11カ月の子どもがいる同市の女性会社員(37)は「ついこの前も手足口病になって定期接種が受けられなかった。子どもは病気にかかりやすい。仮にコロナワクチンを受けさせるとしても予定通りに進められるのか不安」と話した。

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