反則負け

 「おやつは△△△円までね」-先生がこう念を押すと、子どもたちの質問ラッシュが始まる。バナナやミカンもおやつに数えるの? 水筒にジュースを入れてもいいですか?…令和の教室はどうなのだろう▲ただ、懐かしい“遠足あるある”には「ルール」に関する大切な教訓が潜んでいるように思う。一見、シンプルに思えるルールにも抜け道やグレーゾーンは存在し得ること。もう一つは、規則に関する疑問はできる限りその場で解消しておくべき-ということ▲将棋のA級順位戦で事件が起きた。優劣不明の終盤戦、対局者の一方が「一時的な場合を除き、マスクを着用しなければならない」と定めた臨時対局規定に違反したとして反則負けを宣告された▲ファンの議論は沸騰している。注意も警告もなしの“一発退場”は厳しすぎる、そもそも、無言で進む対局の場にマスクが必須なのか、いや「悪法」も法なのだ、守らぬ方が悪い…▲例えば、飲み物を口にする時には誰もがマスクを外す。遠足のバナナの可否が気になる子なら「一時的って何分?」と質問するのかもしれない。曖昧さが否定しきれない規定と、あまりにも厳格な適用の不均衡を思わずにいられない▲息詰まる攻防は唐突に放り出されて、ザラリとした後味の悪さと、未完の棋譜が残った。(智)


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