広島拘置所の塀に被爆者の画家が描いた壁画。それが今、危機に直面しています。
老朽化による建て替え計画があり、保存方法が決まっていないのです。
入野泰子さん「カープのような元気なコイをとか、いろいろ声をかけてもらって夫も勢いよく描いたと思う」
入野さんの夫・忠芳さんが制作した壁画。江戸時代の広島の風情を描いています。
1989年、近くに建つ広島城の築城400年を記念し広島市から依頼されました。
入野忠芳さん「歩く間、日常からちょっと離れたようなそんな気持ちになれたらいいと思うんですよね」
鮮やかな色彩を保つため2009年から4年間、毎年2カ月かけて修復。その間に胆管がんが見つかりましたが、体を押して作業を終え2013年、自宅で亡くなりました。
5歳のとき、事故で左手を切断。その半年後には、被爆。結婚後、創作に身を捧げる姿をそばで見てきた入野さん。
壁画を見に来た人たちと思い出話に花が咲きます。そんな中去年7月、広島市から突然連絡が来たました。
内容は拘置所建て替えの計画があり、壁画は取り壊しデジタルで保存するというのです。
入野泰子さん「皆さんに認めてもらって市民権を得ているような壁なので支持されていると思う。それをなくしてしまっていいのですか」
そこで立ち上がったのが、かつて夫と共に働いた人や子どもを絵画教室に通わせていた親たち。
保存を求める会を立ち上げ市に要望書を提出しました。
これに対し、広島市は…
松井一実市長「要望を重く受け止めて保存する方向で、何がどこまでできるかを関係者でよく話し合っていきたい」
拘置所を管轄する法務省によると、現在の建物は取り壊し建て替えるものの、壁画については広島拘置所と市の判断を待つとしています。
入野さんらは今後、壁画の芸術的価値や移設費用を調査し署名を集める活動を始める予定です。