<社説>世界県人大会閉幕 「命どぅ宝」の心刻んだ

 沖縄というルーツでつながる人たちが国も言葉も超えて心を一つにし、第7回世界のウチナーンチュ大会が閉幕した。コロナ禍という困難を乗り越え、絆を確かめた大会として新たな歴史を刻んだ。 新型コロナウイルスの世界的な流行で国をまたいだ渡航が制限され、ウチナーンチュ大会の開催も危ぶまれた。1年の延期を経て、オンライン参加を併用した複合的な形式で開催に至った。閉会式参加者は過去最多の前回大会には及ばないが、海外1673人、国内1776人が古里沖縄に集うことができた。

 世界との相互交流の窓口として、5年に一度のウチナーンチュ大会の存在の大きさを改めて認識することとなった。ブラジル県人会会長の高良律正さんは「大会を再開してくれた沖縄県の勇気と使命感に感謝と敬意を表する」と述べた。高良さんも初めて沖縄の地を踏んだ一人だ。開催を模索したことで再開と出会いのドラマが生まれた。

 交流の機会を絶やさなかった県関係者や国内外の県人会の尽力に感謝したい。

 1年の延期で、沖縄の日本復帰50年の年と重なった。海外の県系人社会では3世から4世、5世へ世代交代が進む。約42万人とされる世界のウチナーンチュネットワークをどう維持、発展させていくか、次世代の交流の在り方が各地で活発に議論された。

 移民の歴史やアイデンティティーの継承を巡っては県立図書館が7月、世界各国に渡った県出身者約5万人の渡航記録をまとめた「沖縄県系移民渡航記録データベース」を公開した。来沖した大会参加者の親戚探しに一役買った。今大会のハイブリッド開催が、交流サイト(SNS)を活用したビジネス展開や若者の参加を促すならば、ウィズコロナ時代に開催した大会の意義はさらに大きくなる。

 海外移民と県民を結び付けるウチナーンチュの精神に「ゆいまーる」「いちゃりば兄弟」がある。そして世界がコロナ禍に加え戦争や分断の危機に直面する中で、「命どぅ宝」の心がよりクローズアップされた大会でもあった。

 新型コロナで亡くなった世界の人々に祈りをささげたペルー県人会長の小橋川ラウルさんは「命はかけがえない『命どぅ宝』だからこそ、私たちは人生を楽しむことも知っている。明るく、人に温かく接することができる」と県民の歓迎に感謝した。

 大会メッセージで平田菜乃華さん、知念パブロ明さんは、ウチナーンチュは「どこにいても『平和の緩衝』の役割を担うことができる」と宣誓した。「命どぅ宝」は世代を超えて受け継がれる。

 海外のウチナーンチュが誇りを持てるルーツの土地として、文化や自然、歴史を受け継ぐことが我々の責務だ。共に平和をつくり、5年後にまた沖縄で会いましょう。まじゅんちばらなやーさい。またんめーんそーりよー。

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