天皇杯逃すも... 専門員の貢献どうつなぐ? 発掘・育成の枠組みが鍵に 【いちご一会のレガシー とちぎ国体・障スポ閉幕】①競技力向上

総合閉会式で行進する本県選手団。今後は成果を選手育成・強化にどう生かすかが課題となる=10月11日午前、宇都宮市のカンセキスタジアムとちぎ

 本県で42年ぶりに開催された第77回国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」と、初開催の第22回全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」(障スポ)が閉幕した。前例のない新型コロナウイルス下での両大会。選手強化や感染対策、おもてなし、共生社会-。県を挙げた取り組みは、どんなレガシー(遺産)を残したのか。未来へとつながる成果と課題を探った。

 「第2位、栃木県」

 10月11日、総合閉会式の成績発表。本県は栃の葉国体以来42年ぶりの天皇杯(男女総合優勝)・皇后杯(女子総合優勝)を逃した。ただ、発表の瞬間にカンセキスタジアムとちぎを包んだのは、落胆やため息でなく、歓声とねぎらいの拍手だった。

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 例年、開催地と東京の一騎打ちの構図となる国体。本県は天皇杯の目標得点を2800点に設定し、組み合わせ抽選後は東京を228.5点上回る2582点と見込んだが、結果は2270.5点にとどまった。

 角田正史(つのだただし)県競技力向上推進室長は「目標に届かず不本意だし、残念だ」としながらも、40競技の得点の積み重ねである点を強調し「それぞれの戦いぶりは見事だった」とたたえる。

 一方、入賞を逃した競技が六つあったのは「予想外だった」。鹿児島、三重国体の延期・中止で、直前大会の成績が加味されるシード権が取れなかった影響は大きい。プレッシャーを抱えたまま本番を迎え、「いつもより緊張してしまった」「期待に応えたくて力んだ」という声もあった。

 開催地の“慣例”ともなっている天皇杯を逃した事実。それを受け止めながらも、県関係者には「未来につながる大会だった」との思いも芽生え始めている。

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 国内トップレベルの選手を県が採用する「スポーツ専門員」56人の活躍は、本県の順位を大きく押し上げた。専門員が獲得した点数は457点。得点のみならず、ジュニア世代の部活や合宿へ参加しての指導や強化への貢献は見逃せない。

 専門員の契約は来年3月末まで。今後、引退選手も含め意向調査を行う予定だが、本県に残りたいとの意思を示す選手もおり、来年度の就職が県内で決まった選手も。教員試験は国体入賞が1次試験の免除要件になっており、指導者として残る道もある。強化費をかけて確保した選手たちに、どれだけ本県と関わり続けてもらえるかが課題だ。

 彼らトップ選手や、結果を出した少年選手ら。その背中を追って今後新たなスターが育つ可能性もある。国体開催を機に始まった、有望な小学生を発掘・育成する県の「とちぎ未来アスリートプロジェクト」の枠組みは今後も維持される予定だ。得点や賞だけではないレガシーを、どう生かしていくかが問われる。

 本年度予算に計上された競技力向上費は約7億1千万円。県は10日、臨時の対策本部会議で今後の競技力向上について協議する。「これまで国体がゴールだった強化は今後、期限がない」と角田室長。今大会で実った果実から落ちた種を、再び大きな花に育てられるか。それは各競技団体の本気度にも懸かっている。

本県と東京の天皇杯得点推移

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