家に帰ろうとするがすんなり帰れない町 謎めいた出会いと別れを繰り返す 「にわのすなば」予告

12月10日より劇場公開される、黒川幸則監督作「にわのすなば GARDEN SANDBOX」の、予告編が公開された。

公開された予告編では、仕事探しのため知らない街に来た主人公・サカグチの姿が描き出されている。すぐに帰るはずが、サカグチを店の2階に泊めるカフェバーの店主、旧家に暮らす女性、サカグチと意気投合するヨシノなど、道中で出会う個性的な面々との謎めいた出会いが映し出されるとともに、「見失った行き先でもう少し遊んで行こうかな」というサカグチの心境の変化を表現したテロップが添えられている。

「にわのすなば GARDEN SANDBOX」は、東京都多摩市でインディペンデント映画の上映やシネクラブを続けるカフェバー・キノコヤが製作した第一回作品。友達の誘いで知らない町にアルバイトの面接に訪れたサカグチは、理不尽な仕事を断って家に帰ろうとするが、なぜかすんなり帰れずに、町をさまよい謎めいた出会いと別れを繰り返す。窒息しそうな社会から逃れ、たとえ無職で手ぶらでも他者とともに愉快なひと時を過ごす、そんな時間が描き出されている。カワシママリノ、村上由規乃らに加え、新谷和輝、遠山純生といった映画評論家・研究者が出演している。

公開を前に、フランスの現代映画作家のジャン=クロード・ルソーと、作家・音楽家の中原昌也からのコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■ジャン=クロード・ルソー(映画監督) 翻訳:新谷和輝
瑞々しく、軽快で、それでいてとても深い。奇妙な遭遇があるライトなロード・ムービーで、人生がそう進むように迷いながら昼も夜も歩き続け、思いもよらず人と出会い、急に布団が頭に降ってくる。ベランダに干された布団のように爽やかで柔らかく…しかしそれが突然降ってくるだけで、散歩の呪いを変えてしまう。この場面はあなたの映画で最も素晴らしい時間の一つです。そして日本映画が今でも小津を覚えていられるということに気づきます。穏やかで、孤独で、悲しみに近いけれど決して痛々しくはない。たとえ待ち合わせを逃そうともう一度集まればよいだけのこと、遊ぶこと、今まで乗ったことがなくてもスケートボードで道を下ってみること、踊ること…ひとりで必死に踊ること…しかし大音量の音楽のむこう、あなたの映画の奥のほうでは、吉田兼好の声が聞こえるのです。
ジャン=クロード・ルソー(映画監督) 翻訳:新谷和輝

■中原昌也(作家・音楽家)
黒川幸則監督の最新作『にわのすなば GARDEN SANDBOX』に出会った興奮を伝えたい!タイトルからして自分が映画に求める「オレの雑木林」感を、最も簡単に実現してしまった究極の作品。これにはやられた!おそらく「キノコヤ」周辺のつまらないはずの近所で撮影。それが凄く映画として十分に面白い!そこでベテラン風祭ゆきが登場すると、急に位相に変異が!どこの映画館でかけてもオーバースペックという奇跡が刺激的。まさに待ち望んでいた現代映画の真骨頂に間違いない。雑木林映画の『市民ケーン』ここに誕生!

【作品情報】
にわのすなば GARDEN SANDBOX
2022年12月10日(土)ポレポレ東中野にて公開

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