命名権巡り地元住民反発 2000人超の反対署名 那須塩原「烏ケ森公園」

市がネーミングライツパートナーを募集した烏ケ森公園

 栃木県那須塩原市三区町の「烏ケ森公園」の愛称を募った市のネーミングライツ(命名権)事業に地元住民が反発している。「歴史的な場所であり、公園名には市民の愛着がある」などとして、2千人超の反対署名が提出された。ネーミングライツの対象施設を巡っては全国でも同様の事例が起きており、識者は「行政が合意形成の在り方を確立すべきだ」と指摘する。

 ネーミングライツ制度は施設の整備費や運営費を調達する手段として普及し、市は2020年6月に導入。6施設で運用されている。

 烏ケ森公園のネーミングライツパートナー公募は今年3月に実施した。那須野ケ原開拓とゆかりが深い市指定史跡の「烏ケ森の丘」などがあり、桜など花の名所としても知られる同公園の維持費は年間約2千万円(概算)。「今後公園を維持管理するためにも、自主財源確保の手段の一つとしたい」との目的だった。

 西那須野自治会長連絡協議会の橋本秀晴(はしもとひではる)会長(71)は4月上旬、同公園がネーミングライツの対象施設だと知り、反対運動を開始。「歴史があり、市民の憩いの場として親しまれてきた。広く知られている公園名には(ネーミングライツは)ふさわしくないのでは」と考えた。西那須野地区で住民2185人から反対署名が集まり、6月下旬には嘆願書とともに渡辺美知太郎(わたなべみちたろう)市長に提出した。

 「市の財政が逼迫(ひっぱく)しているのは分かる」。橋本会長は制度の趣旨に理解を示す一方、「ふさわしい施設を精査してほしい。特に納得がいかないのは、対象施設を決める際に市民の合意が省かれたことだ」と訴える。

 市によると、施設の正式名称を変更する場合には議決が必要だが、愛称の場合は不要。制度導入時にホームページなどで周知し、市民の理解促進を図ったが、担当者は「合意形成はすごく難しい」と明かす。愛称は現在、審査中だ。

 ネーミングライツなどを研究している鳴門教育大の畠山輝雄(はたけやまてるお)准教授(45)が18年に実施したアンケートによると、全国で600以上の施設でネーミングライツが導入されている。

 制度自体は定着したといえるが、過去には京都市や横浜市などで対象施設を巡って市民らが抗議した例もあるという。畠山准教授は「公共施設には多額の税金が使われている。当該施設へのネーミングライツ導入の是非を議決案件とすることで、市民や議会と多角的に議論をすべきではないか」と提言。「『自治体の総意で制度を推進している』というパートナー企業向けのPRにもなる」と話した。

市がネーミングライツパートナーを募集した烏ケ森公園

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