グッドルーザー サッカー 笑いと涙があふれたロッカールーム、新たなページを刻んだ大分南 【大分県】

全国高校サッカー選手権の県予選決勝の舞台に初めて立った大分南には、万感の思いがあった。1月の県高校新人大会は休校のため出場辞退。5月の県高校総体では体調不良者が多く1回戦敗退。三重野英人監督は「今年のチームは想定できないアクシデントがあったが、チームワークで乗り越えてきた」と振り返る。たどり着いた決勝の舞台を前に、「今日で5試合目。(決勝戦までの)4週間はいろんな緊張や不安があったが、これが集大成だ。後悔しないようにしよう。勝負の世界だから勝つ時も負ける時もある。しっかり楽しんでいこう」と選手をピッチに送り出した。

横断幕の「最後の1秒まで走りきれ!」がチームの姿を現していた。飛び抜けた選手はいないが、全員ハードワークができ、チームの勝利のために走り続けることができる。試合の序盤こそ緊張があったが、豊富な運動量で相手のパスワークに順応した。前半に先制点を許したが、巻き返しを図った後半は中盤の枚数を増やし、サイドから攻撃の形を作った。平山極(3年)のクロス性のシュートは相手GKに阻まれたが、決定機を作った。しかし、試合終了間際に前掛かりになった攻撃の隙を突かれ2失点。粘り及ばず大分南の挑戦は、ここで幕を閉じた。

タイムアップの笛が鳴り響くと、ピッチに崩れ落ちる選手、両手で顔を覆ったまましばらく動けない選手、笑顔で健闘をたたえる選手がいた。優勝を逃した悔しさもあれば、力を出し尽くした充実感もあった。80分間必死で走り抜いた選手たちを三重野監督はねぎらい、「(コロナ禍で)練習ができなかった経験も、決勝で負けた経験も、今後の財産になる」と言葉を掛けた。

試合を終えたロッカールームは笑いと涙があふれた。3年生がそれぞれ、思いを同級生と下級生に伝えた。キャプテンの末永孟久(3年)は「最初は先生から怒られ、みんなに迷惑をかけ、キャプテンらしいことができなかった。夏の練習はきつかったけど、頑張ったからこのピッチに立てた。このメンバーでやれてよかったと思う」と感謝の言葉を伝えた。本住蓮(同)は「自分はこれで競技をするのが最後になる。サッカー人生の最後をこのメンバーでやれて本当によかった。練習後の部室でみんなとワチャワチャできなくなるのは寂しいけど、引退してからもみんなで仲良くしよう」と笑いを誘った。

勝利はつかめなかったが、大分南サッカー部の歴史に新たなページを刻んだ。3年生の流した汗と涙は、後輩たちへの大きな道標となったはずだ。

(柚野真也)

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