死刑を巡る発言で葉梨康弘(はなしやすひろ)法相が更迭された11日、栃木県内の識者らは「あまりにも軽はずみな発言だ」と糾弾し、岸田文雄(きしだふみお)首相による閣僚の人選を疑問視した。県民からも「人の命を日頃どう思っているのかが現れた」などと発言をとがめる意見が相次いだ。
「許すことができない発言だ」。宇都宮市内の宝石店で起きた放火強盗殺人事件で、2010年に刑が執行された元死刑囚の弁護団長を務めた高木光春(たかぎみつはる)弁護士は憤りを隠さない。
「死刑執行は法相の権能として例外的に許された行為だ」と説明した上で、「極めて慎重な判断が必要になる。死刑執行は単に書類にはんこを押すセレモニーではない」と断じた。
宇都宮大地域デザイン科学部の中村祐司(なかむらゆうじ)教授(政治学)は、更迭された山際大志郎(やまぎわだいしろう)前経済再生担当相に続く閣僚の不祥事に「立て続けに生じる事態は重い。岸田首相の任命責任が問われる」と強調する。
当初の続投の意向から更迭へ一転した。「首相の言葉が軽くなってしまう」とし、政治資金問題が指摘される寺田稔(てらだみのる)総務相を含む“辞任ドミノ”の可能性を指摘した。
県民からも発言への批判が相次いだ。
日光市清滝2丁目、印刷業石原正章(いしはらまさあき)さん(63)は「法相という仕事への姿勢が見える不適切な発言だった」と切り捨てる。
よつ葉生協(小山市粟宮)の冨居登美子(とみいとみこ)会長(76)は、「更迭は当たり前。(決断が)遅れたのは論外だ」と手厳しい。「大臣を仲間内から選ぶからこんなことになる。誰のための政治か」と語気を強めた。
「役職に重みを感じていなかったのだろう」。宇都宮市新里町、エステサロン経営藤野絵美(ふじのえみ)さん(42)はあきれ顔だ。「死刑になるほどの犯罪には心痛めた被害者がいて、死刑囚にも家族がいるかもしれない。そうした人のことも軽んじている」と非難した。