「任命責任」の取り方

 「私自身、重く受け止めている。課題にしっかり取り組み、解決することで、責任を果たしていきたい」-。いったんは続投させると決めた法相の更迭に踏み切った岸田文雄首相は一昨日、自身の「任命責任」を問われてこう語った▲大臣が職を去る理由が「死刑のはんこ」発言なら、こっちは“判で押したような反省”か-の余計な感想はともかく、問題がすり替えられてはいないか▲「しっかりと課題に向き合い、解決すること」-それは、いつだって内閣が果たすべき国民への責任で、大臣が辞めたり交代したりすることとは関係がない。問われているのは、俗な言い方をするならば「人を見る目がなかった」ことの責任だ▲彼の資質や人柄を正しく見抜けずに、閣僚に据えてしまったあなたの責任をどう考えていますか-と、ここまで親切にかみ砕いて質問しなければ、適切な答えは返ってこないのだろうか。だとしたら少し悲しい▲行動を伴わない反省には意味がない。任命責任を真に重く受け止めているのなら、取るべき行動の選択肢はそれほど多くないだろう。その一つは「総理を続けていいですか」と国民に信を問うことかもしれない▲当分は選挙の心配のない「黄金の3年間」とやらに甘えられては困る。その黄金は、とっくに輝き具合が怪しい。(智)

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