『アニマルポート長崎』老朽化 “殺処分ゼロ”目指し 建て替え検討へ 譲渡、啓発の中核拠点 長崎・大村

成犬を保護している犬舎。施設は古く、どこか冷たい印象=大村市森園町

 野良犬や野良猫を保護する長崎県動物管理所(アニマルポート長崎、大村市森園町)が、建設から半世紀近く経過し老朽化している。全国でも殺処分数が多い状況にある犬猫の殺処分ゼロを目指し、県も建て替えの必要性を認識しており「県民への啓発や協働、譲渡推進などの中核拠点に位置付けたい」としている。
 県動物管理所は、狂犬病予防法に基づく犬の捕獲抑留施設として1976年に建設された。その後、動物愛護の精神が広まるにつれ、子犬や猫の保護にも対象が拡大。現在は犬猫に関する苦情の対応や巡回なども担っている。
 管轄するのは長崎、佐世保両市を除く本土地区(一部離島も)で、2021年度に同管理所で捕獲・引き取りをした犬猫は計781頭。そのうち治癒の見込みがないけがや感染症、攻撃性の高い犬、自力で餌を食べられない子猫などは施設内で殺処分の対象となる。21年度は計480頭が殺処分され、その多くが子猫だったという。県全体の殺処分数は年々減少傾向にあるものの、20年度の殺処分数は全国ワーストワンとなるなど依然として多い状況にある。

保護されている子犬。「ながさき犬猫ネット」を通じて飼い主を募集する


 「新しい子犬を保護したばかりなんですよ」。11月上旬、同管理所の子犬舎では、諫早市内で保護された子犬5匹が元気に走り回っていた。置かれた餌に駆け寄る子もいれば、近くまで職員に抱えられて来る子も。「子犬は新たな飼い主が見つかりやすい。(譲渡希望の犬猫の情報を掲載する)『ながさき犬猫ネット』で近く募集を始める予定」と担当者は話す。
 同管理所ではこうした捕獲動物の譲渡に力を入れており、敷地内には子犬舎や猫舎のほか、マッチングルームも備える。21年度は収容した犬猫のうち約240頭を新たな飼い主につないだ。
 ただ建物の各所で老朽化が目立ち、海が近いことから塩害の影響もあるという。成犬を保護する犬舎に空調はなく、おりが並ぶ内部もどこか冷たい印象を感じさせる。敷地には十分な駐車場もないため、大規模な譲渡会も開けない。県生活衛生課の担当者は「何とかやりくりしているが、(譲渡会開催など)そもそもそうした造りになっていない」と話す。
 大村市内で地域猫活動に取り組む団体の関係者は「市民でもどこにあるか知らない人が多く、『雰囲気が怖くてあまり行きたくない』という人もいる」と明かす。

 県は今後、建て替えに向け検討委を立ち上げたい考え。現段階では場所や機能、規模、完成時期などは未定で「なるべく早い段階」(同課)で整備したいとしている。
 市内の保護団体の関係者は「譲渡会など人が集まりやすい施設にすることはもちろん、発見された猫を緊急的に保護できるような機能があれば」などと要望する。別の団体関係者は「飼い方セミナーの開催や犬猫ネットの使いやすさ向上など、飼い主希望者の裾野が広がる取り組みが必要」とソフト面の充実を指摘。「犬猫に限らず、小さな命に優しい県になってほしい」と願った。


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