3年ぶりマラソン 安全確保に奮闘 コロナ禍や雨 ボランティア手探り

(左上から時計回りに)「ももたろうパートナーズ」の久保さんと田中さん、AEDを入れたリュックを背負いランナーの様子を見守る角南副院長、検温に当たるボランティアのコラージュ

 岡山市で13日開かれた「おかやまマラソン2022」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で3年ぶりとなった今大会は、感染対策をはじめ安全に楽しめる運営がこれまで以上に大きな課題となった。大会を支えたボランティアやスタッフらの一日を追った。

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 13日早朝、スタートまで2時間を切ったジップアリーナ岡山(同市北区いずみ町)。ランナーたちが次々と小型カメラの前を通り、傍らのパソコンのモニターに体温が表示される。

 コロナ対策で設けられた検温所だ。約1万1千人に上るランナーたちの体調を迅速にチェックするため約50人のスタッフが配置された。大半がボランティアで、リーダーの一人で会社員の今城啓慈さん(41)=同市北区=は「競技中は密になる場面もある。感染を防ぐために緊張感を持って取り組む」と表情を引き締める。

 コロナ禍での大会に向け実行委は入念な準備を進めてきた。参加ランナーを前回比で2割減らし、スタート地点の待機場所も拡張。出場者には1週間前からスマートフォンのアプリなどに体温など体調を記録してもらった。高橋伸夫・競技運営課長(53)は「未体験のことばかり。日本陸上競技連盟のガイダンスを基本にしながら、ランナーに携帯できる消毒薬を配るなど思いつく限りの対策をしてきた」と話す。

 3年ぶりの今大会では、実戦不足から途中で体調を崩す人が相次ぐことも予想された。コースの各救護所やゴール地点のシティライトスタジアム(同いずみ町)では、医師や看護師らのボランティアが座り込んだ人らに駆け寄り介抱した。

 「過去5大会で心肺停止は4件起きている。今回、久しぶりにフルマラソンを走る人も多いだろうし、慣れない雨でコンディションが微妙に変わることも予想される」。岡山協立病院(同市中区赤坂本町)の角南和治副院長(59)はゴールそばで自動体外式除細動器(AED)を持って待機した。幸い大事に至ることはなかったといい、「ほっとした」と語った。

 「普通に寄り添って走れたのがうれしい」と言うのは「ももたろうパートナーズ」で視覚障害者の伴走ボランティアを務める会社員田中義之さん(50)=同市中区。久保瞳さん(76)=同市南区=と1本のロープを互いに握って走った。ゴール後は喜びをかみしめるように肩を抱いて歩いた。

 コロナ禍で身体的な接触を避けるため、伴走できない時期もあったという。「私は誰かが隣にいてくれないと走れない」と久保さん。田中さんは「マラソンを通じて、人と人とが支え合う大切さをまた伝えていきたい」と笑顔で話した。

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