「判検交流」人事が波紋 行政訴訟担当裁判官が法務省の局長に 「公正な裁判阻害」と抗議や疑問

 東京地裁で国を相手とする行政訴訟を担当していた裁判官の春名茂氏を法務省に出向させ、国側の行政訴訟責任者である訟務局長に就けた人事が波紋を広げている。「判検交流」と呼ばれる人事制度だが、10月31日には「公正な裁判を阻害する」などとして弁護士有志約330人が最高裁と同省へ抗議書を提出。22日の参院法務委員会では、立憲民主党ネクスト法相の牧山弘恵氏(神奈川選挙区)が斎藤健法相らをただした。

 9月1日付で同省へ異動した春名氏は裁判長として、ジャーナリスト・安田純平氏を巡る外務省のパスポート発給拒否の違憲性を問う訴訟を担当していた。この人事には与党内からも「注目案件を抱える裁判官を異動させるポストではない。内閣のチェックが働いていない」(自民の閣僚経験者)などの批判があり、「失言以外での葉梨康弘前法相更迭の判断材料となった」(同)とされる。

 法務省の答弁などによると、「判検交流」は裁判官が検事の身分になって同省に出向して国の訴訟活動などを担った後に再び裁判官に戻る制度。半世紀以上前から続くが刑事部門では2012年に廃止されて民事のみで行われている。春名氏のように行政部裁判長を経験して訟務局長に就いた例は2件あるが途中で他部署を経ていたといい、直接の異動は同氏が初という。

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