保険で貯蓄は本当に効果的? 月々の積立貯蓄に保険を利用するメリット・デメリット

年末調整のシーズン、加入中の生命保険会社から生命保険料控除のハガキや封筒が手元に届いていることでしょう。このタイミングで、自分の保険を再確認する人も多いのではないでしょうか。

加入中の保険の中には、掛け捨てだけではなく積立貯蓄を目的としたものもあることでしょう。今回はこの保険で積立貯蓄した場合のメリット・デメリットについて解説します。


積立商品としての保険種類と特徴

保険は大きく分けると掛け捨て型と積立型の2種類です。今回は積立型のおもな商品の種類とその特徴について説明します。

1.個人年金保険
老後の積立の代表的なもので、公的年金制度を補完する保険です。たとえば満期を60歳ないし65歳、70歳までに設定し、満期後、決まった年数(10年、15年、20年など)ごとに積立金を受け取る、あるいは一括で受け取ることができます。

2.終身保険
一生涯の死亡保障です。資産運用として使われるものの中に、「低解約返戻金型」という払込満了前に解約すると、すでに払い込んだ保険料よりも戻る金額が少なくなるという特徴をもつものがあります。その分、保障額に対し、保険料を抑えることができ、かつ払込満了後に解約すると、払い込んだ保険料よりも多くの金額が戻ります。この特徴を使い、資産運用の商品として利用されています。

保険料を円で支払う円建てと、ドルや豪ドルなどで支払う外貨建てがあります。また死亡したときに保障するものや、三大疾病にかかった場合や所定の介護状態になったときに保障が下りるものがあります。

3.養老保険
保険期間内に死亡すると、死亡保険金がおります。期間を満了し生存していた場合、満期保険金として、死亡保障と同額の金額を受け取ることができます。

4.変額保険
死亡保障で、終身型と定期型とあります。保険料の一部を運用し、保険会社は将来の支払いに備えます。その運用を多くは国債が使われますが、この変額保険は日本だけでなく世界の株式や債券などに投資する投資信託で運用する保険です。

そのため途中解約をする際、払込期間を終えたタイミングであっても返戻金は運用実績に伴うため、元本割れを起こす可能性があります。

5.学資保険
子どもの学資金の準備を目的とした保険です。満期は17歳、18歳などおもに子どもの大学入学に合わせて設定されています。満期を迎えると、子どもの進学に合わせて年次ごとに受け取るあるいは、満期金を一括で受け取ることができます。また積立途中もお祝い金として受け取ることができるものなどもあります。

この保険は死亡保障が基本保障です。契約者である保護者が亡くなると、その後の保険料を支払わなくても、契約した学資金が支払われます。また被保険者である子どもが亡くなると、この保険は無かったものとし、支払った保険料は戻り、終了します。

保険で積立貯蓄した場合のメリット

毎月の貯金代わりに、保険で積立を行った場合、どのようなメリットがあるか見ていきましょう。

・解約返戻金が確定している
保険を解約したときの金額が契約時に確定されている点です。そのためどの時点で、いくら受け取ることができるか明確なので、安心できます。

ただし外貨建ての保険の場合、外貨ベースでは確定していますが、為替により変動します。変額保険も運用結果次第で元本割れを起こす場合があります。

・「投資」の超初心者が始めやすい
変額保険は、投資信託で運用する商品であることを上記で説明しました。初めて投資信託を始めようと思っても、投資信託も商品がたくさんあり、なかなか選ぶことができない、中身がよく分からないため、迷ってしまうことがあります。しかし変額保険であれば、基本的に商品はお任せでき、悩むことなく「投資」を始めることができます。

・保障がある
終身保険のうち、三大疾病保障のある保険に加入した場合は、がんなどの大きな病気になっても保障が下りるため、その分を将来の資金に充てるという考え方もあります。

さらに三大疾病に罹った場合に保険料が免除される特約が付帯された保障であれば、その時点で保険料を支払うことなく、積立が継続されることと同様に扱われるため、収入が減少したとしても、将来の資金準備を継続できます。

・受け取り時に控除が適用される場合がある
保険を解約する際に、一括受け取りを選択すると「一時所得」となり、所得税の控除を受けることができます。

解約した時に受け取る金額 - 支払ってきた保険料 - 特別控除額(最高50万円) = 一時所得の金額

つまり増えた分が50万円を超えなければ、課税されないということです。

保険で積立貯蓄した場合のデメリット

一方、保険で積立を行う際のデメリットもあります。

・元本よりも増えにくい
生命保険は変額保険以外、おもに国債で運用されています。安定した運用が見込めるものの、低金利であるため、増えにくくなっています。

・投資信託などの運用商品よりも非効率で
毎月支払う保険料が積み立てる金額となりますが、この保険料全額が運用されるわけではありません。

保険料は「純保険料」と「付加保険料」とに分かれており、「純保険料」は保障に充てられ、解約時のお金の積立は「付加保険料」の一部で運用されます。

つまり自分が払う保険料の多くは保障やその他の運営費に回り、運用されるのは一部だけです。このため解約時の金額が確約できるというメリットは享受できます。

しかし単純に「運用」という点で考えると、その他の商品に比べて、運用に回るお金が少ない分、効率が悪くなります。

・保険に入った目的が分かりにくくなる
将来の貯蓄目的で、積立機能のある三大疾病終身保険に加入した際、がんなどの三大疾病保障を持ちつつ、積立できます。がんにならずに老後を迎えた場合は、老後の必要な時点で解約し、解約返戻金を受け取ることになります。そしてもし、がんにかかったときには解約返戻金ではなく保障が下り、がん治療の費用に充てることができます。しかし、保障額すべてをがん治療のために使ってしまうと、本来の目的とする貯蓄としての機能を果たすことができなくなります。

・毎月の積立金額が変わることがある
外貨建ての保険の場合、毎月の保険料が200ドルというように、ドルベースになっているものがあります。そのため加入当初は1ドルが100円で毎月20,000円くらいの積立を予定していたものが、円安で1ドルが140円にもなると、月額保険料が28,000円と負担が大きくなることがあります。

・生命保険料控除よりもiDeCoのほうが控除額は大きくなる
たとえば会社員(国民年金第2号被保険者)が、毎月20,000円を生命保険(平成24年以降に保険加入したものとする)とiDeCoで積み立てた場合を比較します(年収が約450万~640万円程度の課税が10%の対象者とします)。

生命保険料控除は控除額の上限が所得税は40,000円、住民税は28,000円までです。したがってお得になる金額は68,000円/年となります。

一方iDeCoは、会社員だと毎月23,000円までの分が全額控除となるため、毎月20,000円の積み立て分全額控除されます。したがってお得になる金額は、480,000円/年となります。

保険が有効なのは保障

たしかに積立貯蓄もでき、保障も兼ね備えた保険は、あれもこれもとカバーしてくれるため、安心感が得られるような気がします。しかし貯蓄として考えると、効率の悪さや保障の目的があいまいになり、そもそも何のために加入していたのか分からなくなりがちです。

毎月コツコツ積立を長い間続けるには、保険は「保障」を目的として加入し、貯蓄とは切り離して加入することをお勧めします。

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