『自分の家族だったら』と想像し、考えて 犯罪被害者遺族が長崎で講演

寄り添った支援の必要性を訴える中谷さん=長崎市筑後町、セントヒル長崎

 犯罪被害者週間(25日~12月1日)に合わせ、犯罪被害者遺族の中谷加代子さん(62)=山口県防府市=が23日、長崎市内で講演し「『自分の家族だったら』と想像し、被害者と一緒に考えてもらいたい」と寄り添った支援の必要性を訴えた。
 中谷さんの長女、歩さん=当時(20)=は同県内の高等専門学校の5年生だった2006年8月、校内の研究室で同級生の男子学生=同(19)=に殺害された。男子学生は遺体で見つかり、自殺したとみられる。
 中谷さんは事件当日の朝、駅前で見送ったのが最後の別れとなった。死亡を伝えるテレビの速報に「歩のはずない」。遺体と対面しても現実を受け止められず「早く起きて」と声をかけた。
 多くの報道機関から取材を求められたが、中谷さん夫妻の職場だった市が窓口になり、娘との最後の時間を家族で過ごすことができた。だが葬儀後も「なぜ殺されたのか」という疑問は消えず、自分を責め、涙が止まらない日が続いた。職場の同僚や友人らの温かい支援が心の支えとなった。
 一方で「早く忘れて元気になってね」などと励ましの言葉で傷つくことも。中傷の手紙や電話にも心を痛めた。「被害者への偏見や思い込みに基づいたSNS(交流サイト)の投稿などで二次的被害を受け、心の傷がずっと残ることもある」と理解を求めた。
 長崎県と県内全21市町が昨年10月までに犯罪被害者等支援条例を施行した点について取材に「みんなが同じ方向を向くことはとても重要。中身を濃いものにしてもらいたい」と語った。
 講演会は県警、長崎犯罪被害者支援センター、県が主催。約100人が聴講した。


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