遺体を衛生的に保全「エンバーミング」コロナ下で注目 福井県内唯一の専門業者奮闘「安全なお別れに貢献を」

遺体を衛生的に保つエンバーミングを請け負うエンバーミングサービスの早坂さん(左)ら=福井県福井市西木田3丁目の同社

 新型コロナウイルス感染症で亡くなる人が増え、遺体を消毒し衛生的に保つ処置「エンバーミング」が注目を集めている。通常、コロナで亡くなった場合は通夜や葬儀ができずに火葬される場合が多いが、エンバーミングを施すことにより遺体から感染するリスクを低減できるという。福井県内で唯一エンバーミングを専門に請け負う事業者は「安心安全なお別れに貢献したい」としている。

 「エンバーミングサービス」(本社福井県福井市西木田3丁目)は今年3月末に設立。「エンバーマー」と呼ばれる民間資格者が在籍している。エンバーミングは本来は遺体の保存や防腐、修復が目的で、遺体の表面を殺菌・消毒するだけでなく、動脈から防腐剤を注入し、血液と入れ替えることで長期間衛生的に保つ。遺体に残存するウイルスなどから遺族らへの感染を防ぐ効果も期待されている。

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 同社によると、エンバーミングは米や英国などで広く普及している。日本では初めて葬祭業者が導入した1988年は191件だったが、コロナ下の2021年は全国で約6万件に増加。一方で対応できる事業者は全国でも約30事業者にとどまるという。

 新型コロナで死去した場合の通夜や葬儀は、厚生労働省ガイドラインで「感染対策の徹底が可能かどうかを踏まえて検討する必要がある」とし、実施判断は遺族や葬祭業者に委ねられている。実際は社会情勢を鑑み実施しないケースが多く、同社エンバーミングセンター長の早坂尊嗣さんは「新型コロナで亡くなった場合、遺族と対面できず出棺されたり、遺体に触れられず十分なお別れができなかったりすることが多い」と話す。

 今年の夏に県内で流行した第7波では新型コロナによる死者数が増加。福井市内の病院や葬祭業者から「遺族と対面してお別れできる方法はないか」など問い合わせが同社に相次ぎ、夏以降で約20件実施したという。コロナで亡くなった人以外では既に約260件の実績がある。

 同社は「困っている病院や葬祭業者の力になり、安心安全な充実した最後の別れの時間の提供に寄与していきたい。エンバーミングの普及啓発にも注力していく」と話している。

 問い合わせは同社=電話0776(35)8396。

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