「世界に羽ばたくきっかけに」-。日本全国の「風流(ふりゅう)踊」が30日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることが決定した。構成する長崎県内の「平戸のジャンガラ」「大村の沖田踊・黒丸踊」「対馬の盆踊」の関係者らは、世界に認められた喜びをかみしめ、伝統芸能の継承に向け決意を新たにした。
大村市の大薩摩黒丸踊保存会の前川與(あたえ)会長は「先人たちの努力も報われた」と笑顔。新型コロナウイルス禍で28日の奉納が3年ぶりだった。「子どもたちが誇り、自発的に『守っていきたい』と思ってもらえるようになれば」と望んだ。
8月、同じく3年ぶりに披露した平戸市自安和楽保存振興会の米倉秀雄副会長は「9地区10集落がそれぞれ誇りを持って披露、奉納を続けてきた。地域の小中学生や住民も継承に向け協力してくれている。登録は素晴らしい」と歓迎。黒田成彦市長も「コロナの流行で毎年お盆の奉納が縮小、中止されているが、今回の登録が良い兆しとなれば」とコメントした。
各地の文化やコミュニティーの核としての役割を果たしてきた風流踊。担い手が不足する中、登録決定が保存継承の弾みになると期待する声も聞かれた。
大村市の沖田踊保存会の沖田秋徳会長は「全国的にどの団体も後継者育成に苦慮している。未来に向かって100年、千年と続けていくためにも、登録は良いきっかけになる」と期待。園田裕史市長も「全市民にこの偉業を伝えたい。保存会や市民が一緒になって継承、発展できるよう市も支援していく」と話した。
対馬市の比田勝尚喜市長は「郷土芸能の発表大会などのサポートや、他地域の住民、子どもたちも一緒に盆踊りができる態勢づくりに力を入れたい」と強調。対馬島郷土芸能保存会の永留堯吉(たかよし)会長は「責任重大。世界に恥じないよう、もう一度初心に帰り、衣装や踊りの形にこだわりたい」と意気込んだ。