輝く文化章

 「授業参観があるから、その間、下の子を預かってくれない?」と、誰かに子守を頼むのは昔の話…でもないらしい。ご近所でも友人でもなく、諫早市の連合婦人会は乳幼児をしばらく預かる活動をしている▲泣きだす子もいるが「おんぶして抱っこして…」。13年前、その活動を始めた西山智子さん(83)は目を細めた。困窮する家庭に食べ物を届けたりする活動も引っ張る。困っている人、苦しむ人を放っておけない、その温かさが言葉ににじむ▲きのうの長崎新聞文化章の贈呈式で、受章したお三方が喜びを語られた。出島に平戸オランダ商館と、歴史的な建造物の復元に尽くした林一馬さん(78)は今年、長崎に移り住んで50年で「そのお祝いをもらった気持ち」▲20年余り前、「長崎の教会群を世界遺産にする会」の会長になり、教会建築の価値を訴えた。熱意ある活動はやがて実を結ぶ。県内の建造物に光を当て、輝かせた立役者であり、恩人だろう▲「一生を振り返ったとき、浮かぶのは友人たちの顔」だと、本県の美術界を引っ張ってきた米村昭彦さん(92)。ほかの作家たちと、平和をテーマに芸術イベントも発信している。「仕事は好きだけど、みんなでやらないと楽しくない」▲人と手を取り合って、無私に、ひたむきに。お三方に通じている。(徹)

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