無形文化遺産に3件

 23年前に出された本「長崎県文化百選 祭り・行事編」(長崎新聞社刊)を開いてみると、神楽、念仏踊り、浮立-と、100の伝統的な芸能や行事が写真付きで紹介されている。おや、名に見覚えのないものもある。いつの間にか途絶えたのか…▲そう思って調べたら、行事の名が変わったり、コロナ禍で一時的に中止されたりしているが、ほとんど全てが続いていた。早合点を恥じる▲途切れることなく、何百年と継がれる行事に、一体どれほどの人が関わり、どれだけの労力が注がれてきたのだろう。これからもずっと大切に、大切に…。「百選」から古人の声が聞こえるようでもある▲「先人たちの努力も報われた」と喜ぶ声がきのうの紙面にある。24都府県、41件の民俗芸能「風流踊(ふりゅうおどり)」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されることになった▲その中には県内の「平戸のジャンガラ」「大村の沖田踊・黒丸踊」「対馬の盆踊」の3件が含まれる。道具を新しくしたり、伝承者を育てる場をつくったりと、さまざまな行政の支援が期待されるという▲20年も前だが、辺り一面に花が咲いたような黒丸踊にすっかり見とれた覚えがある。なにも3件に限るまい。伝統芸能の一つ一つを、ずっと大切に、大切に。先人に続いて唱和する。(徹)

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