カフェバーで仕事、鬼滅の刃で漢字勉強…ウクライナ避難民の今 福井で踏み出した新たな一歩

中沢清美さん(右)からコーヒーの入れ方を学ぶビクトリアさん=福井県福井市内のカフェバー

 ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナを離れ、福井県内で生活する一部の避難民が学校に通い始めたり、働きだしたりしている。「日本の大学に入りたい」「自立に向けてコミュニケーション力を磨く」。日本でのキャリア形成や長期生活に向けて新たな一歩を踏み出した。

 県内では今年4月以降、10~40代の男女7組10人(12月1日現在)の避難民が、県職員向け住宅や日本語学校「福井ランゲージアカデミー」(福井市)の学生寮で暮らしている。

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 福井市で生活する姉を頼り、県内初の避難民として息子と母の3人で来県したビクトリア・モルチャノヴァさん(33)は、11月中旬から同市のカフェバーで働き始めた。日本語のコミュニケーション力を磨こうと、週1回ペースで1日3時間ほど出勤。カフェバー代表の中沢清美さん(59)からコーヒーの入れ方やカウンターでの所作、接客の基本を学ぶ。

 ビクトリアさんは「家族といると、ウクライナ語を使ってしまう。仕事は緊張するけど、言葉の不安を乗り越えられるように頑張りたい」。県内企業の工場の見学にも出かけており、中沢さんは「次のステップにつながるように生きた日本語を覚えてほしい」とエールを送る。

 港湾都市オデッサ出身のサスロバ・ミレナさん(16)は、9月から仁愛女子高校普通科グローバル・サイエンスコースに通い始めた。もともとJポップが好きで日本語に親しみがあったといい、日常会話には困らない。教員やクラスメートのサポートを得ながら授業に臨み、放課後は自主学習し、ウクライナの学校のオンライン授業も受ける。「毎日時間が足りない。日本の理系の大学に進めるように頑張る」と意気込む。

 首都キーウ近郊で育ったクリザニフスキー・ナザールさん(17)は、9月から足羽高校の多文化共生科日本語コースに通う。「高校生活は見るもの聞くこと、全てが新鮮」。将来は大学に進み、翻訳者になるのが目標。苦手意識がある漢字は、漫画「鬼滅の刃」を読みながら覚えている。

 県によると、他の避難民も日本語を学びながら自立に向けて努力しているという。県は来年3月末まで避難民への寄付を受け付けている。個人の場合、ふるさと納税制度が活用できる。問い合わせは県国際経済課=電話0776(20)0750。

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