リフォームで「相見積り」は必要か−−予算を決めるためのポイントとは

同じリフォーム工事でも、見積りに差が出ることがありますが、何が違うのでしょうか?

テレビ東京「カンブリア宮殿」にも出演したリフォーム会社・さくら住宅創業者の二宮生憲 氏の著書『新版 住宅リフォームを考えたら必ず読む本』(あさ出版)より、一部を抜粋・編集してリフォーム会社からの見積もりについて解説します。


「見積もりはどう考えたらよいですか?」

メーカー、業者とは共存共栄するという考え方を忘れない

見積りは必ず現場を見てから

リフォーム工事は新築工事と違って、生活スタイルの変化により、和室を洋室にしたり、畳からフローリングに替えたりします。

それを実際のお住まいを見ないで見積りが出せるのでしょうか。見積りは必ず現場を見てからです。

【現場を見ないと見積りが出せない理由】

たとえばリビングにフローリングを張る場合、やり方により値段が異なります。今の床を剝がしてから張るのか、それとも重ねて張るのか……ここがポイントです。下地材が腐っている場合など、その上から張っては何もなりません。フローリングを張ることによって、床の高さが変わり入り口のドアが開かなくなるケースもあります。

これまで何度も書いていますが、リフォーム工事で大事なことは、 まず現場を確認して、工事のやり方を決め、見積りを出す 。これが鉄則です。

【断るときは気持ちよく】

また、見積りに来てもらったからといって、負い目を感じる必要はありません。しかし断るときにはきちんと礼儀を尽くすことも大事です。会社側としても、今は断られてもいつかまたお仕事をいただけるかもしれないお客様です。頼むほうも頼まれるほうも、お互いに礼節を守っていきたいものです。

「相見積りはしたほうがよいのでしょうか?」

見積りの比較は難しい

見積りで工事の「質」はわからない

同じ工事でも、見積りに差が出ることがあります。何が違うのか、一言で言えば私は工事の「質」だと考えています。

商品に大差はなくても工事の「質」はリフォーム会社によって大きく変わります。お客様の中には数社の会社に見積りを依頼して満足されている方がいらっしゃいますが、リフォームの場合は相見積りをしても比較が難しくほとんど意味がありません。なぜなら工事の「質」は見積りではわからないからです。

場合によっては現場も見ないで、お客様からメールで受け取った写真のみで見積りを出す会社もありますが、これは正しい見積りとは言えません。 相見積りは、同一条件・同一材料・工期も同じもので比較しなければ無意味です。

しかしながら、そうでないことがほとんどです。これは相見積りではありません。結局は総額のみで判断される方が多いのが実情です。

見積書をきちんと理解できる方なら、見積り先の会社に質問をして、きちんと答えられる会社であるか判断するのはよいと思います。しかし経験上、内容をきちんと把握できる方は少ないです。

それならば数社に相見積りを依頼するより、その数社の会社を調べたほうがよいと思います。ご近所で工事をされた方に聞く、取引銀行に聞く、あるいは住宅設備メーカーのショールームで聞くのもおすすめです。そのとき、聞き方を工夫したり会社のイメージを自分なりに咀嚼して、金額ではない安心を買うつもりで質問をするとよいでしょう。

金額以外の部分を判断材料にベストと思える一社に工事を依頼すれば、きっとよいリフォームができると思います。そんな相見積りなら大歓迎です。

「お隣とはどうして値段が違うのですか?」

間取り・面積等、形状が変われば値段も変わる

「部材費+出張費(交通費) )+技術費+(取付手間賃) 」が基本

最近、「隣がいくらだから、自分の家も同じ価格でできるか」という問い合わせが目立つようになりました。

一戸建ては当然、それぞれの住宅面積が違います。入り口の位置や、屋根の形状、窓の大きさ等も全く異なります。いちばん基本になる面積が変われば、総額も違って当然です。これはとくに外壁塗装や、屋根の葺き替え等で顕著にあらわれてきます。リフォームに限らず同じ間取り、同じ面積でなければ外壁の面積や、内部のクロスの面積、そして総額も違ってきます。

では水道工事等の手間賃についてはどうでしょうか。たとえばキッチンやシステムバスを交換するときに、「外部の散水栓の蛇口を換えたい」「ついでにトイレのタンクの浮きを替えたい」という要望があった場合はどうでしょうか。単純に外の散水栓は3000円前後、トイレの浮き(ボールタップ)は5000~7000円くらいの部品代になります。ところがそれぞれをキッチン等の取り換え時ではなく、それだけを依頼した場合は、「部材費+出張費(交通費)+技術費(取付手間賃)」がかかり、部材と合わせて1万円以上の金額になります。

作業段取りでも値段は変わってくる

このように、キッチンやシステムバスの工事と一緒に行えば費用を抑えることができるのです。これは専門技術者がその場にいて、一緒に工事することができるからです。この前は安かったのに、「今回水道の水漏れを頼んだら高かった」と言われても、右記の理由で価格は異なってくるのです。

工事をする職人さんにとっても、蛇口を交換するだけでも移動の時間等を入れると、半日はかかってしまいます。一方、キッチンやシステムバスの工事と一緒なら、時間のロスは少なくて済みます。

「うちは本当に安くしてもらった」という話があっても、状況が違えば価格も違ってきますので、部分的に取り上げての話は参考になりません。使う材料、間取り、工事の規模によって価格は大きく違うのです。価格については必ずなぜそうなるのか会社に説明してもらうことで、より納得できると思います。

労賃が半分であれば無理がくる

職人さんの手間賃はどうでしょうか。各会社間で大きい差は出ていません。協定の価格がありますから、日当に換算して、1000~2000円くらいの差しかないはずです。

リフォーム工事は請負契約です。請負契約の本質は、労働契約とほぼ同じです。50%OFFということは、労賃を半値にすることに等しいのです。浴室の交換一つとってみても、大工、解体業者、電気、水道、ガス組立てなど、6業種以上の職人さんが入ってきます。各職人さんや会社がとくに安く作業をする理由がありません。無理をさせると2回の工程が1回になったり、下地の処理がおろそかになったりなど、手間を省くことも考えられます。そうなるとチラシで表示している「半分でやります」は必然的に無理だと言えます。すぐ値引きをする会社や「安い」を売り物にする会社には注意する必要があります。

とくに「手間賃(労賃)を安くやります」はたいへん危険なことです。手間を「早く」「安く」は建築の世界ではよい仕事にはつながりません。むしろ「丁寧に」「きちんと」を優先するべきです。

家は見た目が隣と同じでも表面積などサイズは変わります。隣と同じ金額とはなりません。

著者:二宮 生憲

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