ジャッジ再契約の舞台裏 すべては記者の速報ツイートから始まった

9年3億6000万ドルの超大型契約で残留することが決まったアーロン・ジャッジだが、ヤンキースはもともとジャッジに8年契約をオファーしていた。9年契約のオファーが提示されたのは、現地の記者によって「ジャイアンツ移籍濃厚」との速報がツイートされたあとだったという。その時点でまだジャイアンツとの合意には至っていなかったが、このフライングツイートがなければ、ジャッジはジャイアンツへ移籍していた可能性がある。メジャーリーグ公式サイトでヤンキースを担当するブライアン・ホーク記者が再契約の舞台裏を伝えている。

ジャッジがジャイアンツへ移籍するかもしれない。ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMのところにマンチェスター・グランド・ハイアットのスイートルームにいた球団関係者から連絡が入った。キャッシュマンはまず、その情報が信頼できるソースからのものであるかどうかを確認。「ジャイアンツ移籍濃厚」とツイートした記者は、ジャッジのファーストネームを「アーソン」と書き間違えていたものの、ツイッターの認証マークがついた有名記者であり、「アーソン」という書き間違えを除けば、その情報は正当なものであるように思われた。

キャッシュマンは次に、ジャッジの代理人を務めるページ・オドルに連絡を取り、「まだ(ジャイアンツとの)合意には至っていない」との情報を得た。しかし、「ジャイアンツが9年契約をオファーした」との情報が流れており、キャッシュマンはヤンキースに残された時間が少ないことを感じ取っていた。

ジャッジがパドレスとの交渉のためにサンディエゴに到着したとき、ヤンキースからのオファーはまだ8年契約だった。パドレスはなんと10年4億ドルの超大型契約をオファー。ジャイアンツファンとして育ち、リッチ・オリーリアやバリー・ボンズに憧れていたジャッジは、代理人のオドルとともに、パドレスからのオファーに驚いたという。

ヤンキースのハル・スタインブレナー・オーナーはイタリアで休暇中だったが、キャッシュマンからの連絡を受け、休暇を中断。「ジャッジ争奪戦」の動向を注視していた。ヤンキースはジャイアンツが9年契約をオファーしていることは把握していたが、パドレスが10年契約をオファーしていることは知らなかったとみられる。

「最後の一押しが必要」と考えたキャッシュマンからの連絡を受けたスタインブレナーは、ジャッジに直接連絡を取り、「ヤンキースの一員でいたいのか?」と単刀直入に質問。ジャッジはイエスと答えたが、9年契約を要求した。ヤンキース一筋でキャリアを終えたい。ジャッジの望みを改めて認識したスタインブレナーは9年契約にゴーサインを出した。これですべてが決着したというわけだ。

ジャイアンツとの合意に至る前に「ジャイアンツ移籍濃厚」の情報が世に出なければ、ヤンキースが9年契約をジャッジにオファーすることはなかったかもしれない。ヤンキース8年契約、ジャイアンツ9年契約、パドレス10年契約という競争のなかで、ジャッジはジャイアンツやパドレスへの移籍を選択していたかもしれない。結果的には誤報となった「ジャイアンツ移籍濃厚」の速報ツイートだが、ヤンキースはこのツイートに救われていたのだ。

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