米マンハッタン計画参加医師の孫 ノーランさん、長崎で講演 科学技術の持つ影響力に警鐘

マンハッタン計画や技術の影響力について話すノーランさん(右)と祖父=長崎市、長崎歴史文化博物館ホール

 米国の原爆開発計画「マンハッタン計画」に参加した米国人医師の孫で、米ウィリアムズ大社会学部教授のジェイムズ・L・ノーランさん(60)が10日、長崎市立山1丁目の長崎歴史文化博物館ホールで講演。科学技術が社会に与える影響について警鐘を鳴らした。
 産婦人科医だった祖父のジェイムズ・F・ノーラン氏=1983年に67歳で死去=は放射線医学を研究していたことから同計画に参加。原爆の開発・輸送に関わり、投下直後の広島、長崎を調査に訪れた。
 約10年前、母が見つけた箱の中に祖父の軍事記録や原子野の広島、長崎の写真などの資料が残されていた。ノーランさんはこれを機に祖父の足跡をたどり、医師らの葛藤や技術が持つ問題を著書「原爆投下、米国人医師は何を見たか」にまとめ、今年出版した。
 講演では、ドイツに勝つために進められた原爆開発が、降伏後は投下自体を目的に続けられたことを例に「技術は人間の行動や思考に強い影響力を持つ」と指摘。現代では、スマートフォンや交流サイト(SNS)などの新技術が、孤独感の増長や若者の自己評価形成に影響を与えているとし「技術の力に誘導されていると認識することが必要」と結んだ。
 ノーランさんは、9月から調査のために長崎を訪問。原爆投下後の長崎の人々に大きな影響を与えた故永井隆博士などについて研究し、書籍にまとめる予定。


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