「被爆体験者」支援、7種のがん追加 厚労省検討会が了承 来年4月から

オンライン参加を交えて開かれた被爆体験者に関する調査研究事業の検討会=厚労省

 国の指定地域外で長崎原爆に遭った「被爆体験者」への支援事業を巡り、厚生労働省の検討会は1日、医療費支給の対象に大腸や胃など7種類のがんを加え、拡充することを了承した。近く報告書をまとめ、国は来年4月の支給開始を目指す。現在は県内在住の体験者に限られている支給範囲を、県外在住者に広げる方針も確認した。
 検討会は、がんや放射線の専門家ら5人で構成。非公開の会合後、同省担当者が検討状況を明らかにした。
 同事業では被爆体験に起因する「精神疾患」とそれに伴う「合併症」に限り、医療費を支給している。県や長崎市はこれまで、対象合併症にがんも追加するよう国に要望。岸田文雄首相は8月9日の長崎原爆の日に同市を訪れ、体験者救済を求めた被爆者4団体に対し、支給対象への「がんの一部」追加を検討すると明らかにしていた。
 対象のがんは他に、乳がん、膵(すい)がん、肝がん、胆のうがん、子宮体がん。この7種類の発がんリスクと、現在支給対象となっている一部の合併症(糖尿病や慢性胃炎など)との間には一定関連が認められると判断した。7種類以外のがんの追加も検討する。
 厚労省はこの関連性をさらに研究するため、7種類のがんにかかっている体験者には研究への協力費として、医療費を支給する仕組みを検討している。
 研究期間は定めない。長崎大などに委託して実施することを想定しており、電子レセプト(診療報酬明細書)の情報などを研究データとして活用する。


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