インボイス制度 登録率は44.6% 法人は7割超に、個人企業は約2割と二極化

 インボイス制度の登録期限まで4カ月を切った。制度への理解度の高まりや、政府が検討する小規模事業者への税負担軽減の議論なども背景に、11月の登録数は約30万件に達し、11月末で累計172万件、登録率は44.6%に上昇した。法人登録の促進は継続し、個人企業も月次では前月の登録数から4割増えた。ただ、依然として個人企業の登録率は低水準が続いている。政府が検討するフリーランスなどの小規模事業者への支援策を見定めている個人企業も多いとみられる。
 国税庁の適格請求書発行事業者サイトの公表データを、東京商工リサーチ(TSR)が独自に分析した。総務省の「経済センサス」の企業数を基に、11月末の登録率を算出した。
 11月末の法人登録は71.6%で、10月末から10.9ポイント上昇した。登録数最多は東京都で、累計23万2,268件に達し、11月だけで4万6,655件が登録した。一方、最少は鳥取県の5,300件だった。
 登録率では東京都が再びトップに返り咲き85.4%、2位に下がった大阪府は79.9%だった。一方、最低は秋田県の56.6%、次いで、山形県の58.7%と東北2県の登録率が低かった。
 個人企業は10月末から4.1ポイントアップしたが、登録率は19.0%にとどまる。売上高1,000万円以下の免税事業者が多く、法人より登録率は低くなるが、免税事業者から課税事業者への移行も一定数あることから、登録が遅れた状況が続いている。
 政府や与党は、免税事業者が課税事業者を選択した場合の軽減措置などを講じる方針で、国税庁などはインボイス制度の説明会などを開催している。しかし、負担が重くなる小規模事業者の反対意見は根強く、軽減策が登録数の大幅増につながるかは未知数だ。
 2023年10月の制度開始を控え、企業は取引先のインボイス登録番号の確認やインボイス(適格請求書)の保存、システム改修に加え、税控除ができない免税事業者との取引方針の決定を迫られている。登録の遅れは制度全体にも影響するため、政府の舵取りが注目される。

  • ※本調査は、国税庁「適格請求書発行事業者の公表情報」の法人及び個人企業の登録情報(2022年11月末)を基に、TSRが分析した。法人数は、総務省「平成28年経済センサス」(活動調査・確報集計(企業等に関する集計))に基づく。
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 国税庁によると、インボイス登録事業者のうち、2022年11月末の登録数(人格のない社団等1,922件を除く)は172万3,746件だった。
 総務省「平成28年経済センサス」に基づく法人数は187万7,438件で、法人の登録数は134万6,079件。登録率は71.6%と7割を占めた。個人企業数は197万9,019件に対し、登録数は37万7,667件で、登録率は19.0%と2割に満たなかった。
 国税庁の2020年度統計年報の課税事業者数は約315万件で、法人約205万件、個人企業約110万件。課税事業者すべてが登録すると仮定すると、法人も個人企業も残り約70万件となる。
 個人企業の月次登録の最多は11月の8万874件で、このペースでは期限の2023年3月末までに間に合わない。単純計算で月間17万5,000件の登録が必要で、駆け込み申請も予想される。

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法人の都道府県別インボイス登録率 東京都が登録率トップ

 2022年11月末の法人登録数や登録率を都道府県別で分析した。
 登録済みの134万6,079件を都道府県別にみると、登録数トップは東京都の23万2,268件(構成比17.2%)だった。次いで、大阪府の11万1,717件、愛知県の8万3,154件、神奈川県の7万5,969件、埼玉県の6万3,916件、北海道の5万8,748件、福岡県の4万9,108件と大都市圏が上位を占めた。
 単月登録数では、伸び悩んでいた神奈川県が前月比70.7%増と急増。千葉県も同68.6%増と前月から登録数を大幅に増やした。
 一方、登録数が最も少なかったのは鳥取県の5,300件。次いで、高知県の6,220件、島根県の6,769件、佐賀県の6,815件、徳島県の7,475件と続く。
 登録率は、東京都が85.4%でトップ。2位は大阪府の79.9%、3位は愛知県の74.7%、4位は福岡県の73.0%、5位は富山県の72.7%の順。
 一方、登録率の最低は、秋田県の56.6%で、山形県の58.71%、徳島県の58.79%、長崎県と島根県の60.4%などが続き、東北や四国が低迷している。

 ※ 国税庁は9月26日、個人情報保護の観点から個人企業の所在地や氏名などをダウンロードデータから削除したため、個人企業の都道府県別の分析はできない。

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