<社説>「高病原性」県内初確認 拡大防止に全力尽くせ

 金武町の養鶏農場の鶏から高病原性鳥インフルエンザウイルスが県内で初めて確認された。県は16日、この養鶏場に残る全ての鶏3万7千羽の殺処分を始めた。 県内の他の養鶏農家では異常は報告されていないが、発生現場から10キロ以内の農家が一時、出荷制限を受ける事態となった。感染が拡大すれば鶏肉や卵の供給に影響が出る恐れがある。鶏肉の需要が高まるクリスマスシーズンのさなかだ。県民の食生活への影響を最小限に食い止めたい。

 今回の感染ルートは明らかになっていないが、渡り鳥や野生動物が持ち込んだ可能性がある。未然に防ぐのは難しい。このため早期通報や防疫を徹底するしかない。県や関係業者、小規模飼育をしている愛好家も含めて拡大防止に全力を尽くしてほしい。

 県によると、発生した農場では約4万5千羽が飼育されていたが9日から14日までに7500羽以上が死んだ。飼養衛生管理基準については守られていたという。

 問題は初動対応の遅れだ。9日に259羽が死んだにもかかわらず、県に報告があったのは15日だった。被害を最小限に食い止めるためには早期発見と早期通報が必須である。県は関係業者と連携を密にし、早期に覚知できる態勢づくりに努めねばならない。人の移動による感染拡大にも注意が必要だ。

 鳥インフルエンザは全国的に増えており、今後も油断は許されない。農水省によると、16日午前までに沖縄を含む19道県で37事例、625万羽の感染が確認されている。過去最多だった2020年を上回るペースだ。

 被害がこのまま拡大すれば、卵や鶏肉が品薄となり、価格が高騰する可能性もある。県内では既に影響が出ている。JAおきなわによると、卵の価格は、以前は1パック140円~160円台だったが、全国的な鳥インフルエンザの感染拡大と飼料高騰で同260~280円で推移している。今回の殺処分で卵の生産量が減るため今後も価格が下がる見込みはないという。

 国は、鶏肉や鶏卵を食べても人に感染する可能性はないとの見解を示している。そうだとしても鶏への感染が拡大すれば、県民の食卓への打撃は大きい。県内スーパー最大手のサンエーは、扱う鶏肉の半分が県産という。今回、搬出が制限されている地域は肉用鶏の農家が多いため、納品が減るのを見込み、店頭で品薄にならないよう県外産や輸入品を増やす調整をしている。

 養鶏農家への打撃や県民の食生活への影響を最小限に食い止めるには、今、感染の抑え込みに全力を挙げなければならない。20年に県内で豚熱(CSF)が発生した際も通報の遅れが問題視された。初動対応が遅れると、農場からウイルスが流出するリスクが高まる。県は豚熱への対応を振り返り、その教訓を生かし、感染防止を徹底してほしい。

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