癒やしの五島

 五島へ行くたびに心が癒やされる。夏は大瀬埼灯台の青い大海原、冬は久賀島のヤブツバキ原生林に咲く無数の赤い花など、四季折々の忘れ得ぬ風景がある▲上五島生まれの母の血を引いているからだろうか。大人になり初めて上五島を訪ねた時、不思議なほど心が安らいだ。深みのある海の色が心地よく、港の岸壁に座ってずっと眺めていた▲放送中のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」では、五島が「癒やしの島」として描かれている。心が疲れ、生きづらさを抱えた主人公や幼なじみは、主人公の祖母が暮らす五島に渡ることで心が解放され、元気になって都会の暮らしに戻ってゆく▲ドラマの舞台が五島に移ると、風光明媚(ふうこうめいび)な自然や飾り気のない人々が登場し、画面がぱっと明るくなる。それはいわば日本の原風景。誰の心にもある「母郷(ぼきょう)」なのだろう。五島を旅する人は、母の懐に抱かれるような心地よさを感じるのかもしれない▲昔から日本の西の最果てといわれ、平安時代の「蜻蛉(かげろう)日記」で「亡き人に会える島」とされた五島も、今日では高速船やジェットフォイルなどで手軽に行けるようになった▲ストレスと付き合いながら生きている現代社会だ。朝ドラがきっかけとなって、たくさんの人が癒やしの島・五島の良さを実感してほしいものだ。(潤)


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