「男の子が見当たらない」未就学児が公園近くの水路に転落し死亡 幼い命が再び…なぜ? 広島

広島県福山市で先月、未就学の男の子が水路に転落し、死亡していたことがわかりました。この水路では過去にも男の子が転落して死亡した事故が起きています。

杉木健那 記者
「遊歩道沿いの植え込みには途切れているところやすき間があるところも見受けられます。柵などは設けられておらず、男の子は何らかの理由で水路に転落したものとみられます」

事故があったのは、福山市の緑町公園近くを流れる水路です。

警察によりますと、先月2日午後2時45分ごろ、保護者から「男の子が見当たらない」と110番通報がありました。午後3時すぎ、付近の住民が水路内で男の子を発見。男の子は、市内の病院に運ばれましたが、死亡が確認されたということです。

男の子がどのあたりから転落したかは分かっていませんが、福山市では事故のあった日に水路沿いの植え込みのすき間になっているところなどにロープを張り、先月26日には危険と判断された1か所にフェンスを設置しました。

沖野上東町内会 菅本栄介 会長
「このすき間というのは、しょうがないですよね。事故があってからの対策になるでしょうけど。残念でしょうがないですね」

こう話すのは、地元の町内会長を務める菅本栄介さん(81)です。

沖野上東町内会 菅本栄介 会長
「子どもさんが以前、亡くなった事故があったみたいです。もうだいぶになりますけどね」

この水路では、2006年にも当時、6歳で小学1年生の男の子が転落して死亡する事故が起きていました。

また、2013年には自転車に乗っていたとみられる40代の男性も亡くなっていて、市は、それぞれ事故後にすき間があったところに植え込みを増やすなどの対策をしているということです。

この水路は、幅がおよそ2メートル、水深1.4メートルほどあります。

沖野上東町内会 菅本栄介 会長
「流れはないんですよ。大雨が降ったときなんかには、かなりの水量でしょうけど、ふだんはこういう状態で」

町内会では年に2回、この水路の清掃活動をしています。その際、危険は感じないといいますが、腰から胸のあたりまでが水に浸かるのだそうです。

町内会 菅本栄介 会長
「川底に泥がいっぱいたまっていますしね。やっぱり難しいですよね、上がるのは。だから、やっぱりハシゴかけて上がったり下りたりして清掃しています」

これまで町内会は、福山市に対して水路の石垣に手すりや足をかけるステップの設置を要望していたほか、植え込み側にフェンスを設けることも提案していました。しかし、実現には至っていません。

町内会 菅本栄介 会長
「このフェンスを、ずっと、あっちまでめぐらすというのは相当な費用がかるでしょうけど」

水路が多い福山市…。10月には北吉津町の水路で70代の男性が、自転車と転落しているのが見つかり、亡くなっています。

ここ2002年からの20年間で、水路に転落し死亡した人は、市道沿いだけでも、62人に上るということです。しかし、市として市内の水路の長さが全部でどれぐらいかなど実態の把握はできていないといいます。

今回の事故を受け、福山市は、ほかの3つの公園の危険な場所にもロープを張るなどの対策をしました。また、来年度以降、今回、事故のあった緑町公園に面した長さおよそ220メートルあるこの水路の植え込み沿いにフェンスを設置する計画です。

沖野上東町内会 菅本栄介 会長
「フェンスがあったら、こういうことが起きなかったかなと痛切に感じました。要望事項を出している者としても対策が1日でも早くされればありがたいなと思います」

福山市は、市道沿いの水路について、2003年から市街化区域内で総延長125キロ分を…、また、市内全域に対象を広げた2018年からは、地域から要望があり、合意が取れたところ、総延長およそ40キロで転落防止策を実施しているということです。

しかし、死亡事故は、また起きました。

どうしたら繰り返されないようにできるのでしょうか。
◇ ◇ ◇
― 全てを対策するのはたいへんだということも、できるところの対策を進めているということも分かります。でも、事故を聞いて、「また福山の水路で?」と思ってしまったのは事実です。

― 20年間で62人が亡くなっているとお伝えしましたが、これは、「市道沿いの水路」だけの人数…。県道などもあるので、実際はもっと多いとみられるし、市は、全体像を把握するのは難しいとしています。

― 小さな命が奪われてしまいました。繰り返さないためには、どうしたらいいのでしょうか。私有地では勝手に手を加えられないなどという事情もあるそうですが、ただただ、解決策について、知恵を絞る必要があります。

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