賛否両論、東京都の太陽光パネル設置義務化、そのメリット・デメリットを議論

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。12月12日(月)放送の「GENERATION」のコーナーでは、東京都が推進する“太陽光パネル設置義務化”について、視聴者を交えて議論しました。

◆賛否両論、東京都の太陽光パネル設置義務化

Twitterの「スペース機能」を活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、Z世代・XY世代のコメンテーターと議論する「GENERATION」。この日のテーマは、"太陽光パネル設置義務化”。

東京都は、新築戸建て住宅に太陽光パネルの設置を義務付ける全国初の条例案を都議会に提出しました。可決されれば2025年4月からスタートします(15日に可決・成立)。しかし、設置費用の負担やメンテナンスの有無、災害時の危険性など疑問の声も多数寄せられています。

この問題に、キャスターの堀潤は「東京都は他の自治体よりも先にいっている印象がある」と話します。なぜなら、従来型の太陽光パネルには多数問題があるものの、東京都は"ペロブスカイト太陽電池”なる最新技術を共同開発し、実装化に勤しんでいるから。

なぜ東京都が太陽光パネルの設置義務化を決めたかといえば、都内の部門別CO2排出量は業務部門41.2%、家庭部門32.3%と70%以上が建物でのエネルギーに起因していますが、建物の太陽光発電設備率は約4%と低いという現状があげられます。2030年カーボンハーフ実現に向けた条例改正で、ハウスメーカーなどの事業者が設置義務化の対象となり、注文住宅の施主や建売分譲住宅の購入者は、環境負荷低減に努めた注文・購入を判断するようになります。

ただ、太陽光パネル設置義務化は専門家の間でも意見が割れ、経済格差の面では推進派は「昼間の電気料金値下げが進み、国民全体に恩恵をもたらす」としている一方、反対派からは「設置できるのは新築一戸建てを取得できる高所得世帯のみ」という意見が。

また、人権問題についても「中国のメーカーに人権問題の有無を確認する」としている推進派に対し、反対派は「太陽光パネルシェアの大半は中国であり、その半分は新疆ウイグル自治区産」だとしています。その他にも「設置に伴う住宅価格の上昇をいかに抑えるか」や「大規模水害時に水没した際の漏電の危険性」など、さまざまな課題が挙がっています。

コラムニストの河崎環さんは「推進派。諸手を挙げて推進という以上の問題で、今誰かが進めないと習慣化していかない。人々が集う都市の習慣としてクリーンエネルギーに変えていかないと、私たちには今後の地球に対しての責任が取れない」と危機感をあらわにし、「今すぐにでも着手すべき」と声を大にします。

そして、人権問題や太陽光パネルの導入により中国が利益を得ると問題視する反対派に対し、河崎さんは「エネルギー問題と政治的な信条、特定の一国に対する意見を交え、この太陽光パネル導入を減速させるのは間違っている」と指摘。「大人の知性の使い方として何をしているのか」、「化石エネルギーだけでなく、そういった考え方も含め"脱化石”は必要。大人たちの化石的なものの考え方や議論のための議論はもうやめないか。さすがに一歩先に進まないといけないのでは」と訴えます。

Health for all.jp代表の茶山美鈴さんは、クリーンエネルギーに関する問題は世界的に進めていくべきことであるなか、「日本はまだ進んでいないイメージがある」と言及。

東京をモデル地区として改善していくことを歓迎し、「どの程度成果があったのかデータ化し、それをもとに日本各地に広がれば」と理想を吐露。ただ、その一方で「それこそ高所得層しか(新築戸建て住宅を)買えないのではないか」、「家が買えない人が増えるのではないか」という懸念も。

◆スタジオ内は肯定派多数、一方で視聴者からは反対の声が

再生可能エネルギー(再エネ)関連の話をする際には、常々経済的な格差をいかに少なくするか、生活に困窮している人の負担を減らすのかに注視してきたNPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、今回の件に関しては「まずは現状認識をフラットにすることが大事」と語ります。

というのも、現在電気料金には「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」が付加され、その負担は増加。さらにエネルギー価格の高騰もあり、厳しい状況が続いています。そうしたなか、太陽光パネルを設置することで電気料金が下がる可能性などあり、現状打破という意味ではあながち間違ってはいないと肯定しますが、東京で常に危険視される地震や昨今多い水害など災害への対策については、さらなる議論を求めます。

また、人権問題についても、中国で問題が起きているのは事実であり、そこは声を上げて取り組むべきことではあるものの、別で議論することが必要」と大空さんは主張。

ただ、Twitterスペースに参加していた視聴者からは、太陽光パネル設置義務化に反対という意見が。2人の視聴者からは「単純に費用やメンテナンス、いずれ発生するであろう廃棄コストなどまできちんと落とし込んでからでないと推進は危険」、「廃棄、コスト高は大きな問題」との声がありました。

これに河崎さんは「廃棄、導入コストにしろ、現状ではお金がかかるが、普及すればそこは吸収される。価格の問題は解決できる」と強調。

大空さんは、東京都の試算では100万円で設置した場合、10年で回収できるとの試算に触れた上で「"義務化”ということが独り歩きしていることが問題」と指摘。小池知事が義務化を強調している点についても、「これは個人が義務化されるのではなく、個人は選択できる。絶対に太陽光パネルを買わなくてはいけないわけではない。それは事業者だけ」と現状を解説。「そこは別問題として切り分けて考えていかないといけない」と注意を促します。

堀は、東京都が太陽光パネル設置義務化を推進するのであれば、デジタル化も叫ばれているため、スマートグリッド化、はたまたスマートシティ・スーパーシティ化して電力を一体運用したらよいと提言。「エネルギーを効率よく計画的に運用できるような新しい都市づくりもセットで打ち出せれば」と期待します。

すると、大空さんは「そういう意味では東京以外でやってほしい。地方は電気を売ることを主要産業のひとつにするしかない」と地方での展開を希望。「東京はお金があるからできるが、厳しい地方自治体の首長にこうした決断をしてもらい、電気を売って活性化させていく、地方で作った電気を都市部に持って行くべき」と語るも「そうした循環モデルを作るに今は良い局面だが、残念ながら勇気ある首長がいない」と嘆いていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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