宇都宮市民がクリスマスに食べる「かぶと揚げ」元祖の店に行ってきた

みよしやの看板商品「かぶと揚げ」。入荷状況によって小~特大サイズがあり、写真は約300グラムの大サイズ

 間もなくクリスマス。食卓の定番といえばチキン、ローストビーフ、ケーキなどが思い浮かぶが、ひな鳥の半身を揚げた「かぶと揚げ」を挙げる宇都宮市民も多いのではないだろうか。

 「かぶと揚げ」は今年、グーグルで都道府県名と一緒に検索された急上昇キーワードランキングの5位に入った。宇都宮のソウルフードとして5月にテレビ番組で紹介された際には「めっちゃうまそう」「食べてみたい」などのコメントが交流サイト(SNS)で相次いだ。

 かぶと揚げの元祖は、1963年創業の「みよしや」。初代の故鈴木礼二(すずきれいじ)さんが「食べごたえのあるものを提供しよう」と考案し、二つ並べるとかぶとのような形になることが名前の由来だという。

 今月20日、宇都宮市上戸祭町の本店を訪れると、営業開始前から既に、かぶと揚げの予約の電話が鳴りやまない状態だった。店長の竹腰裕一(たけこしゆういち)さん(52)は「23~25日の3日間で、毎年3千個ぐらい売れます」と誇らしげだ。「いつから『クリスマスといえばかぶと揚げ』になったのかは分からないけれど、この時季が一番忙しい」という。

 かぶと揚げに使うのは、生後30~40日の国産ひな鳥。均一に火が通るように包丁で切れ目を入れて、もも以外の上半身をまるっと、170~180度の油で揚げていく。

 衣は日本酒と片栗粉と卵。味付けは塩、こしょうのみ。いたってシンプルだが、どうやら黒っぽい油に秘密があるようで…。「何十年も継ぎ足して、油自体に鶏のうまみが溶け出している。唐揚げが有名な大分県の方では『だし油』って呼ぶみたいです」

 こんがりときつね色になったところで、いざ実食。竹腰さんいわく、正しい食べ方はないが、最初に手羽を切り離して食べる人が多いんだとか。しかし、揚げたての熱さに手が耐えられず、何より、どでかい肉を前にして、早く食べたい気持ちを我慢できない。そのまま顔を近付けてかぶりつくと、衣がパリッと高い音を立てた。

 むね肉のジューシーさ、ささみのしっとり感、軟骨の歯応え。これだけの変化は、スタンダードな唐揚げでは一度に味わえないだろう。クリスマスのごちそうに選ばれるのも納得だ。口の周りと両手をべとべとにしながら、夢中で完食した。

 店の常連のほとんどは地元客で、10個、20個と注文する人もいるという。竹腰さんは「ほかの地域の人にも知ってもらい、食べてもらいたい。ギョーザと相乗効果で宇都宮の食文化を盛り上げていけたら」と願っている。

 宇都宮市民も、そうじゃない人も、今年の聖夜はかぶと揚げ、がぶっと食べてみっけ?

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 かぶと揚げは小~特大(220~350グラム)で、530~680円。

 24、25日は予約の持ち帰りのみ。予約は22日まで受け付ける。

 【みよしや本店】栃木県宇都宮市上戸祭町519。▽営業時間 午後4時~10時▽定休日 月曜▽(問)028.622.8302。

かぶと揚げの元祖、みよしや本店の外観。赤い看板が目印だ
かぶと揚げを作る竹腰さん
長年継ぎ足している白絞油を使い、7~8分かけて揚げていく
二つ並べるとかぶとのような形になるのが、かぶと揚げの名前の由来だ

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