「これ以上拡散させない」鳥インフル 長崎県内初確認 殺処分に県職員300人動員

鶏舎で殺処分作業をする県職員=佐世保市江迎町(県提供)

 「これ以上拡散させない」-。長崎県佐世保市江迎町の養鶏場で鳥インフルエンザが検出された22日、関係者は対応に追われた。殺処分にあたった県職員らは、ニワトリの命を奪うことにためらいながらも粛々と作業を進めた。県庁では防疫対策会議が開かれ、感染を拡大させないため、対策の徹底が呼びかけられた。
 小雨が降る午後2時半過ぎ、佐世保市吉井町に設けた鳥インフル対策の臨時拠点に数台のバスが到着した。乗っていたのは現場で作業を終えた県職員ら。疲れた表情を見せながら、防護服を脱ぎ、ポリ袋に入れていた衣類など各自の荷物をまとめていた。
 殺処分を担当した県農業経営課の大久保浩太さん(33)は、午前4時ごろ長崎市を出発し、7時から作業に入った。「心が痛むが有事の際にはやるしかないと思い、割り切った」と唇をかんだ。ニワトリの捕獲と、死骸を穴に埋める班などに分かれたという。
 午後3時45分ごろ、交代で作業へ向かう県職員らが臨時拠点に集まってきた。体調確認などを済ませると、担当職員から手渡された防護服に「殺」や「埋」と役割を書いた。降っていた雨は雪に変わり、重い足取りで現場に向かうバスに乗り込んだ。
 処分には県内全域から県職員約300人を動員。午前7時に始め、8時間おきに交代し、終了するまで続ける。ただ、県内は大雪になる恐れがあり、天候次第で作業を中断するという。
 鳥獣を飼育する動物園も、対応を強化した。佐世保市の九十九島動植物園(森きらら)は、諫早市で野鳥の感染が確認された11月下旬以降、一部の鳥類の展示やペンギンの散歩などの行事を中止。園から半径10キロ以内で感染を確認した場合は、全ての鳥類の展示を取りやめる予定。西海市の長崎バイオパークでも鳥類の展示制限や餌やり体験などを中止している。
 県庁では養鶏団体や県教委の関係者らを集めて防疫対策会議があり、状況を共有。拡大防止のため、農場やため池など水場近辺の消毒、野生動物の侵入を防ぐネットの破損状況などの確認徹底を呼びかけた。


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