<わがまち回顧2022> 南島原支局 「谷水棚田」百選から漏れる

田植え後の水面が朝焼けに染まる「谷水棚田」=南島原市南有馬町(ODAWARAFilm提供)

 朝日に輝く棚田の水面(みなも)はまるで絵画を見ているようだった。日本の棚田百選でも屈指の絶景だった「谷水棚田」(南有馬町)は今年2月、農林水産省が主管する令和版「百選」(棚田遺産)から漏れた。かつて農林水産大臣賞に輝いた「南島原らしさ」を失う残念なニュースだった。
 農業人口の減少や高齢化で荒廃が進む棚田が増える中、44道府県271地区(県内9カ所)では、生産する米のブランド化や地域ぐるみの保全活動、会員制交流サイト(SNS)を活用した景観の発信による観光誘客などに取り組んでいる。
 人の価値観は量的充実から質的向上へ変化しつつあり、良好な景観への関心が高まっている。一方で、管内では経済性が優先され、整備が進む「自転車歩行者専用道路」などには惜しげもなく巨費が投じられている。
 良質な景観は人々の暮らしに潤いや安らぎを与えるとともに「住んでみたい」「住み続けたい」と感じさせる「まちの魅力」となる。6月の選挙で無投票3選した松本政博市長も同様の公約を掲げていたはずだ。今からでも遅くない。行政と市民が一体となって良好な景観を「保全・創出・活用」してほしい。
 主なニュースは▽自転車歩行者専用道路の事業費10億円増▽聖マリア像を巡り「政教分離」論が再燃


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