両親「川の水がいっぱい入ってきて辛かったね。助けてあげられなくてごめん」保育園近くの川で5歳児死亡 検証委から市に再発防止策【動画ニュース】

広島市の保育園で5歳の男の子が行方不明になり、その後亡くなった事故で、再発防止策などをまとめた報告書が市に提出されました。

事故を受けて設置された検証委員会の山田浩之委員長はけさ、広島市に報告書を市こども未来局の森川伸江局長に手渡しました。

この事故はことし4月、広島市西区の市立保育園で、5歳の男の子の行方が分からなくなり、その後、近くの川で見つかり、死亡が確認されたものです。

報告書では、園児がどこから園外に出たのかについては特定に至らなかったとしながら、園児が園外に出ることができる環境にあったことを課題と捉えています。

ハード面では、4つの箇所から園児が園の外に出ることができたことなど、施設の安全点検が不適切だったことを指摘。

市に対して安全点検の項目に「園児が外に出る可能性のある箇所」を追加することや、園庭と園外を隔てるフェンスなどについては高さ150センチ程度を目安とすること、全ての園に録画機能付きの防犯カメラを設置することなどあげています。

ソフト面では、事故当時、園児24人を保育士2人でみていたことを問題点にあげました。国の配置基準は満たしていたものの、療育手帳を持ち配慮が必要な男の子から、結果的に目を離してしまう状況になったと指摘しました。保育士の負担軽減をはかるため、市独自の職員の配置基準を設けるよう求めています。

また、男の子の姿が最後に確認された10分後に園外の捜索を始めたものの、警察への通報が1時間後だった点については、園外の捜索を開始する時点ですぐに通報するようにマニュアル改訂を提言しています。

検証委員会の山田委員長は…。

検証委員会 山田浩之委員長
「痛ましい事故が起こってしまったわけで、その点では問題があったを言わざるをえないのですが、保育自体が、大きな問題があったかと言われると、必ずしもそうではない。むしろ構造的な欠陥、組織、その保育園自体が持つ欠陥が浮き彫りになったのではないかと思います。
実際には保育の現場ではここが危ないんじゃないかとかずっとされているんだそうです。そういう話を聞くシステムがなかったというのが構造的な欠陥と私は考えています。
市も管理職も、いわゆるトップダウンのシステムになっていたのではないか。市も一方的にここは危ないからというのではなく、どこが危ないのかというのをまず園の様々な方に聞く姿勢が必要なのではないかと思います」

広島市側は…。

広島市こども未来局 森川伸江局長
「提言を真摯に受け止めまして、段階的にスピード感を持って取り組んでいきたい。方向性やスケジュール感を出す、そういったものの方針を年明けのできるだけ早い時期にと考えております。それに基づいて予算措置をやって取り組んでいきたいと考えています」

現場の保育園では…。

小林康秀キャスター
「この保育園のフェンスの改修工事が終わりました。既存のフェンスや生け垣が取り除かれて、高さ180センチの新しいフェンスがおよそ66メートル道路沿いに取り囲んでいます」

改修工事は、検証委員会が問題視した、「園児が園外に出ることができる環境」というハード面の一部を対処した形です。

男の子の両親は市を通じて、次のようなコメントを出しました。

「息子が亡くなって8ヵ月が経った今でも私達家族は辛い気持ちでいます。 息子は発達障害で言葉の意味をほとんど理解できない子でした。(全ての発達障害の子に当てはまることではありません。個人差があります) それでも息子は『バイバイ』や『おとうさん』『おかあさん』と言葉が言えるようになりちょっとずつ成長してて、これからもっと言葉を覚えて会話もできるようになっていくのかなと楽しみにしていた矢先にこんな事になってしまった。本当に辛く悲しいです。 息子は笑顔が素敵でみんなに愛される子でした。
本当に可愛かった。息子に会いたい。抱きしめたい。
川の水がいっぱい入ってきて辛かったね苦しかったね。助けてあげられなくてごめんね。
私達家族みんなあなたの事をずっと愛してるよ」

もう、二度と起きてはならない事故です。

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