梅屋庄吉の生涯描く 直木賞作家・川越さんが新作 「描いてみんね!長崎」事業活用

県の「描いてみんね!長崎」事業で生まれた川越さんの新刊「見果てぬ王道」

 小説家や漫画家を取材旅行に招く長崎県の事業「描いてみんね!長崎」を活用した直木賞作家の川越宗一さんが今月、中国の辛亥革命の指導者孫文を支援した長崎生まれの実業家梅屋庄吉の生涯を描いた新作「見果てぬ王道」(文藝春秋)を出版した。
 川越さんは2020年1月に2泊3日で長崎、壱岐両市を訪問。長崎市では「長崎近代交流史と孫文・梅屋庄吉ミュージアム」、壱岐市では梅屋の妻トクの実家跡など梅屋ゆかりの地で取材した。川越さんは同事業を活用し、昨年は平戸で生まれた明(中国)の英雄、鄭成功(ていせいこう)の母、田川マツの生涯を描く作品を出版している。
 同事業は漫画家や小説家らを2泊3日で受け入れ、県内各地の希望する場所を学芸員らと一緒に巡る。交通費や滞在費など取材にかかる費用を支援。県側が作品のテーマを設けることはせず、作家に自由な発想で取り組んでもらう。本年度の事業費は約149万円。事業は16年度にスタートし、これまで延べ25人を招き21作品が生まれている。
 県文化振興・世界遺産課によると、全国的にも珍しい取り組みで作家だけでなく出版社にも好評という。同課は「作家のつながりからも事業が広がってきている。一つでも多くの作品を生み出し、本県の魅力を発信していきたい」としている。

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