越前たけふ駅、伝統工芸の技が光る和空間 2024年春開業、北陸新幹線の新駅舎紹介

越前たけふ駅の1階待合室を飾る巨大な越前和紙。駅舎の随所に伝統工芸の技が表現されている=福井県越前市大屋町
村田治夫さん

 福井県丹南地域の玄関口となる越前たけふ駅(福井県越前市)。翼を広げたコウノトリをイメージした駅舎の外観に、銀鼠色(ぎんねずいろ)の越前瓦がアクセントを加える。待合室の壁一面を飾るのは巨大な越前和紙。五つの伝統工芸の産地が集積する全国でもまれな地域にふさわしく、ものづくりの技がちりばめられている。

 待合室に屏風状に飾られた越前和紙は高さ4.5メートル、幅10メートル。和紙作家の堀木エリ子さん(京都府京都市)の作品で、越前市花の菊の模様をあしらった。バックライトを通した和紙独特の柔らかな光が和の空間を演出する。

 匠の技を伝える意匠は、コンコースの柱のパネルにも。繊細な幾何学模様で日野山や日野川を描いた指し物、越前箪笥(えちぜんたんす)を象徴する猪目模様の金具、越前漆器の朱塗り、越前打刃物の刃紋を模した模様が表現され、来県者を出迎える。

 県内で唯一、JR駅に併設しない新設駅。隣接地では道の駅「越前たけふ」が3月18日に開業し、3人制バスケットボールコートを備えた多目的広場なども同時に供用を開始する。周辺には広大な農地が広がり、市は開業後を見据えた開発として、研究開発施設や商業施設などの誘致を進めている。

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◇観光協会長・村田治夫さんに聞く

 越前たけふ駅開業を見据えて改定中の越前市観光振興プランは、観光消費額の拡大に重点が置かれた。市観光協会の村田治夫会長(68)は「観光を地域の持続可能性につなげるのが大事。地域資源に付加価値を持たせて商売として成り立つ在り方を探らなければならない」と強調する。

 越前和紙や越前打刃物など伝統工芸の集積が最大の強みととらえ、「生きた産業の場で職人と触れ合う『本物』の体験はよそではできない」と、定額タクシーなどの仕組みによる産地への誘客に意欲を示す。これまで観光に縁遠かった工房も多い中、「産地組合とともに常にどこかの工房で来訪を受け入れられる体制を目指したい」と開業後を見据えている。

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