NISA対象年齢の変更、残業代の割増賃金率が引き上げ。2023年に見逃せないお金のイベントカレンダー(1月〜6月編)

2021年、2022年と食品・それ以外の商品・サービスなどの値上げラュシュにうんざりという方も多いのではないでしょうか。残念ながらこの値上げラッシュは2023年も続きそうです。そんな状況もあり、日々コツコツ節約に取り組まれていることと思いますが、節税も忘れてはなりません。

節税とは、税務制度にあわせ、合法的に税金の額を減らすことです。2023年1~6月までのお金のイベントをチェックしながら、「所得税を節約するにはどうしたらよいか?」を考えてみませんか? 戻るはずの税金が見つかれば、確定申告で還付するようにしましょう。


お金のイベントを確認しよう

まずは、1月~6月にどのようなお金のイベントがあるのか、一覧表で確認してみましょう。

上記カレンダーは毎年発生するお金のイベントだけでなく、2023年に特別起こるイベントも入れています。次項でそれぞれ詳しく解説していきます。

2023年1月以降、NISAの対象年齢が20歳以上から18歳以上へ引き下げ

NISA(一般NISA)とつみたてNISAは、20歳以上の方が利用できる非課税の投資制度でした。しかし、2022年4月の民法改正により、成人年齢が18歳に引き下げられました。それに伴い、2023年1月1日から一般NISAやつみたてNISAの利用年齢は、今までの20歳以上から18歳以上へと変更になります。ただし、NISA口座が開設できるのは2023年1月1日時点で18歳以上の方が対象になります。

一般NISAやつみたてNISAは投資で得られた利益に対する税金がゼロになり、効率的にお金が増やせる制度です。一般NISAは年間120万円まで投資することができ、その投資に対する利益は5年間非課税になります。また、つみたてNISAは年間40万円まで投資することができ、その投資で出た利益は20年間非課税にできます。

【新しいNISA制度(統合NISA)が開始】
2024年1月から新しいNISA制度(以下、統合NISA)が始まります。

《制度の恒久化・非課税保有期間の無期限化》
非課税保有期間が無期限になります。また、口座開設可能期間はいつでも始められるよう期限を設けません。

《年間投資上限額と非課税限度額が抜本的拡充となる》
・つみたてNISA機能は「つみたて枠」となり年間投資上限が120万円に拡充
・一般NISA機能は「成長投資枠」となり年間投資上限が240万円に拡充
どちらの投資枠も併用可能になるので、年間投資上限額は360万円になります。
新たに、生涯にわたる非課税限度額(生涯投資枠)が1800万円という枠組みが設けられます。ただし、成長投資枠は、そのうち1200万円です。

《現行の一般NISA・つみたてNISAの取り扱い》
2023年(令和5年)末で買い付けが終了になります。それまで、非課税口座内で運用している商品は、新しい制度の非課税限度額とは別枠で取り扱い続けることになります。

《ジュニアNISA廃止》
ジュニアNISAは2023年末で制度が廃止となります。2024年以降は、当初の非課税期間(5年間)の満了を迎えても18歳まで非課税で保有できます。統合NISAを利用できるのは成人のみ、未成年は利用できないので注意しましょう。

成人年齢が18歳に引き下げられたため、人生の早い段階から資産形成が始められるようになりました。NISA制度を利用すれば、得られた利益を投資に回し、さらに利益を生み出す複利効果が期待できます。これからの人生での様々なイベントを支える資金作りに役立つはずでしょう。

2月~3月は会社員・公務員も「確定申告」をすれば所得税が還付となる

確定申告は、前年1年間の所得から納める税金を計算して申告し、税金を支払う手続きです。毎年2月16日~3月15日までの間に行われます。確定申告というと、一般的に自営業者やフリーランスが対象になりますが、会社員や公務員も必要があれば行うことができます。確定申告をすることで納め過ぎている所得税が還付されるかもしれません。

たとえば、次のようなことに心当たりはありませんか?
(1)年末調整で生命保険控除の申請を忘れた人
(2)2023年の途中で会社を退職し、年末調整を受けていない人
(3)扶養家族の国民年金保険料を代わって支払った人
(4)2023年中に医療費が多くかかった人(医療費控除を受けることができます)
(5)災害や盗難などで資産に損害を受けた人(雑損控除を受けることができます)

もし、該当することがあれば、確定申告をしましょう。以下に、医療費控除・セルフメディケーション税制、雑損控除などについて補足します。

●医療費控除を活用しよう
毎年1月1日~12月31日までに支払った自分と同一生計の家族の医療費の合計が10万円以上の場合、医療費控除を受ければ、所得税を安くすることができます。医療費の対象になるものには、病気の治療費、通院にかかる交通費、薬代、あん摩マッサージ、はり、きゅうなどの整体による施術費用などがあります。医療費控除の金額は「実際に支払った医療費の合計額-保険から支給された給付金-10万円」で計算できます(医療費控除の上限は200万円まで)。

●セルフメディケーション税制を活用しよう
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例制度です。特定の医薬品を購入した際、所得控除の対象になります。特定の医薬品の購入費用の上限は年間10万円で、実際に所得控除できるのは「10万円-1万2000円=8万8000円」になります。特定の医薬品に該当するのは、「スイッチOTC医薬品」といいます。医師、薬剤師などから指導を受けたもの、一般用の医薬品であっても医療用から転用されたものが対象になります。詳しい情報は厚生労働省のHPで確認できます。

セルフメディケーション税制が適用されるには、健康保持、病気の予防への取り組みが前提になります。なお、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できず、どちらか一方を選択することになります。

●雑損控除を活用しよう
災害または盗難もしくは横領によって「雑損控除の対象になる資産の要件」にあてはまるほどの損害を受けた場合、雑損控除を受けることができます。

雑損控除の金額は、以下で計算した額の多い方です。
・(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
・(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円

なお、雑損控除とは別に、その年の所得金額の合計額が1000万円以下の人が災害にあった場合は、災害減免法による所得税の軽減免除があります。納税者の選択によりどちらか有利な方法を選べます。

4月から労働基準法の省令改正、デジタルマネーで給与受給開始

労働基準法の省令改正により、2023年4月以降、労働者側の同意がある場合などに限り、企業から支払われる給与を、「PayPay」「楽天ペイ」などのスマートフォン決済アプリ口座が入金先として選択できるようになり、その結果、給与がデジタルマネーで支払われることになります。

ただし、デジタルマネーでの支払いは、企業と従業員の間で労使協定を締結したうえで、従業員が希望した場合に限ります。また、デジタルマネーは現金化できるものというのが前提になり、そうならないポイントや暗号資産(仮想通貨)での支払いは認められていません。さらに、給与振り込みを手掛ける資金移動業者などの指定や監視体制などの強化も必要とされているので、実際にデジタルマネーでの振り込みが始まるのは、施行から数カ月後となりそうです。

4月から出産育児一時金42万円が50万円へ引き上げ

出産育児一時金とは、健康保険からの保険給付です。健康保険や国民健康保険などの被保険者またはその被扶養者が出産したとき、出産に要する経済的負担を軽減するため、一定の金額が支給されます。出産費用が年々増加しており、それに対応するため、支給額42万円が、2023年4月以降より50万円に引き上げられます。

4月から残業代の「割増率」が変わる

労働基準法では「使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。」と定められています。そのため、会社は労働者が法定時間を超えて働くときは、通常の賃金よりも割増した賃金を支払う必要があります。この割増部分のことを「割増賃金率」といいます。

1か月あたりの時間外労働が60時間を超えたときは、50%以上の割増率が適用されます。ただし、これまでは、大企業のみ適用となり、中小企業は猶予されていました。そのため、中小企業では、法定労働時間を超えたときと同じく、25%以上の割増賃金率が支払われていました。しかし、2023年4月1日以降は、中小企業も50%以上の割増賃金率へ変更になります。

6月に「住民税決定通知書」が届いたらふるさと納税が控除されているか確認

住所地の自治体から、住民に対して住民税の税額を通知する書類に「住民税決定通知書」があります。ふるさと納税をした方は、「住民税決定通知書」が届いたら「寄付金控除」または「税額控除額」の金額が、昨年の「ふるさと納税額-2,000円」とおおよそ同額になっているか確認しましょう。近い数字になっていれば、無事に税額控除されて自己負担は2000円だけですんだことになります。もし、金額に相違がある場合は、お住いの自治体に問い合わせしましょう。

住民税とは、その年の1月1日現在で居住している人が、住所地の自治体に対して納める税金です。都道府県や市区町村に納めた税金は、その地域の教育や福祉、その他さまざまな行政サービスのために使われます。住民税は、徴収方法が2種類あります。会社員や公務員の方は給与から天引きされる「特別徴収」で住民税を納めます。その際、直近の2022年分の所得をもとに計算される住民税に切り替わるのが毎年6月からとなり、翌年5月までの12回に分割して納付します。

自営業者やフリーランスの方は、各自治体から直接本人へ住民税の納税通知書が交付されます。納期は6月・8月・10月・1月などの年4回にわけて、それぞれ納付期限までに、金融機関の窓口、コンビニなどで支払うことになります。

6月に領収書の整理、ふるさと納税を検討

6月は1年の折り返し時期です。前半の家計の状況を確認し、後半に向けての取り組みを見直しましょう。たとえば、医療費にかかった領収書を整理してみたり、ふるさと納税の限度枠予定の半分だけ寄附してみたりなど、次へつながる段取りをしておけば、余裕を持った年末を迎えられます。

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