熱いうちに打ち、切れ味の良い1年に 福井県の越前打刃物、初打ちで昔ながらの「古式鍛錬」再現

熱した鉄を打ち片刃包丁を作る職人=1月1日、福井県越前市余川町のタケフナイフビレッジ

 福井県越前市の伝統工芸、越前打刃物の初打ちが1月1日未明、同市余川町のタケフナイフビレッジで行われた。白装束姿の職人が昔ながらの技法「古式鍛錬」を再現し、今年の無事と刃物業の発展を祈った。

 新年の恒例行事で今年で29回目。鉄を熱する親方役は伝統工芸士の弥氏良寬さん(39)、鉄を打つ子方役は西野音弥さん(20)と野村諒さん(21)が務めた。

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 3人は同ビレッジ内の神棚に参拝し、年が明けると同時に初打ちを開始した。親方は炎の中に鉄を入れて熱し、打つ場所や力加減を子方に指示。子方は熱されて赤くなった鉄を交互に打ち、「カン、カン」と乾いた音を響かせた。

 時折雨が降る中、大勢の住民やカメラマンが力強い姿に見入っていた。約40分で片刃包丁を仕上げ、工房内の神棚に奉納した。弥氏さんは「良いスタートが切れた。今年は本物中の本物を作っていきたい」と身を引き締めていた。

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