うさぎ年

 数を数えてあげるよ、と言葉巧みに持ちかけ、橋の代わりに整列させたワニザメの背中を渡って、向こう岸はすぐそこ。へへっ、ちょろいちょろい。その一言がワニザメたちを激怒させてしまうのは因幡(いなば)の白ウサギ▲計略が成就する寸前の余計な発言で墓穴を掘った彼。競争の途中で昼寝を始めて必勝のレースをふいにしたご同類のことも思い出される。今年の干支(えと)の動物、詰めが甘いというか、お人よしと言うべきか▲実際のウサギは警戒心が旺盛で、両目はほぼ360度全てを見渡すことができるらしい。敵の近づく音をいち早く察知するための長い耳は左右をばらばらに動かして音源を探ることができ、体温の調節にも大切な役割を果たしているとか▲広い視野と感度のいいアンテナで、ぴょんぴょんと軽やかな飛躍の一年に-。今年もよろしくお願いします▲欲張りや中途半端を戒める「二兎(にと)を追う者は一兎をも得ず」は真っ先に思いつくウサギのことわざだが、本紙HPのリクルート情報サイトで見つけたある若手社員の座右の銘は「二兎を追う者だけが二兎を得る」▲へえ、と感心しながら思いついた。投げて打って…大谷翔平選手の「二刀流」って“二兎追う流”だ♪ 年の初め、新たな一歩や果敢な挑戦を誓う全ての人に、大らかな声援を送りたい。(智)

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