冬の主役たち(4) 駅伝女子 苦しんだ先に見つけた「走る喜び」 浅倉愛(大分東明3年) 【大分県】

けがが多く、苦しんだ3年間だったが最後は笑顔でタスキをつないだ。女子の全国高校駅伝(都大路)に出場した浅倉愛は、「このチームで走れることに意味があった。けがから復帰して、この場に立つことができてうれしい」と笑顔で振り返った。

竹田市久住町出身の浅倉は、5歳から中学3年まで剣道に打ち込んだ。転機となったのが、剣道の体力強化として取り入れた陸上トレーニングだった。素質を見いだされ、高校は鹿児島の駅伝強豪校から声がかかり、同校入学後に本格的に競技を始めた。親元を離れての生活、陸上で名を上げた選手がそろう環境での専門的な練習、全てが初めてのことばかり。しっかり頭で理解して行動する浅倉はなじめなかった。「流れに乗れなかった。キャパオーバーだった」と心身のバランスを崩し、走ることを辞めた。そんな時、「もう一度、走ってみないか」と誘ってくれたのが大分東明の井上浩監督だった。何度も会ううちに「ゼロからスタートしてみよう」と思ったという。

目標には届かなかったが、力を出し切った

2校目となる大分東明に入学後は「精神的に辛かった。1年間は気持ちの整理ができずに引きずった。競技に集中できなかった」。ようやく走れるようになると股関節を痛め、リハビリに時間を費やした。ただ、この頃から気持ちの変化に気づく。「走れることは当たり前ではないからこそ、走ることに喜びを感じられるようになった」。2年時には憧れの都大路を走ったが、本来の調子を取り戻せず、「うれしさより悔しさの方が大きかった」。その後もけがが重なり、思い描く走りができなかった。入学当初から浅倉を見守った横瀬彩也香コーチは「挫折を味わったからこそ、苦しいときも頑張れる。駅伝はフォームも大事だが、『心』。あの子にはそれがある」と支えた。

3年生になった浅倉はけがと向き合いながら、チームをまとめた。けがで苦しむ下級生には自分の経験を元にアドバイスをし、キャプテンであり、エースとしてチームを引っ張る多田妃奈(3年)をサポート。上級生や下級生が何でも言い合える雰囲気をつくった。高校最後の都大路では、チームとしては昨年の順位を上回ることはできなかったが、個人的には2年時と同じ3区を走り、「昨年のタイムを越えられた。いろいろなことがあった3年間だったけど、今年のチームは最高だった」と話す。卒業後は大学でも競技を続ける。「全く燃え尽きてないし、ここからがスタート」と前を見据えた。横瀬コーチは「けがなく継続して練習できれば能力はある。気持ちの強い選手なので、もっともっと強くなる」と成長を楽しみにしている。

次のステージを目指す浅倉愛

(柚野真也)

© オー!エス! OITA SPORTS