<FFM乗艦ルポ> 海自護衛艦 自動、省人化進む 長崎で建造、佐世保配備

「のしろ」の艦橋

 三菱重工業長崎造船所で建造された海上自衛隊の新型護衛艦「のしろ」(3900トン)が昨年12月に就役し、佐世保港へ入った。護衛艦の機能に加え、掃海機能も備わった新型多機能フリゲート艦(FFM)のもがみ型3番艦で、FFMの佐世保配備は初。長崎から佐世保への航行に乗艦した。
 12月15日。同造船所での引き渡し式を終え、のしろは昼ごろ佐世保へ向け出港した。同艦は全長約133メートル、乗員は約90人。従来の護衛艦より船体をコンパクト化し、システムの統合と自動化によって省人化を実現しているという。平時の警戒監視のほか、対潜水艦戦や対機雷戦(敷設、除去、捜索)など多様な任務に対応できる。

上に見えるのが統合アンテナ「ユニコーン」

 航行中の護衛艦に乗ったのは初めてだが、想像以上に揺れは少なかった。艦内の階段を上り下りし、甲板や艦橋、食堂など各所を案内された。船体がコンパクト化していても中はまるで「迷路」だった。
 のしろの大きな特徴の一つは、その外観。全体的に凹凸を少なくし、レーダーに探知されにくいようステルス性を高めている。渡邊真史艦長は「普段から『秘匿』には重きを置いている。ステルス機能が非常に有効に活用できる」と口にする。
 外観のもう一つの特徴がレーダーなどを集約した「ユニコーン」。機密を理由に関係者から「ユニコーン部分は『アップ』では撮影しないで」と告げられた。「見る人が見たら詳細が分かる」のだという。
 「ユニコーン」の下に位置する艦橋へ入る。従来は艦橋内に個別配置していた電子海図装置やレーダー指示器などを集約。紙の海図も減らしているという。ここでふと思った。電子機器が機能しなくなった場合、紙の海図の運用などアナログでの対応が難しくならないか。隊員にそう水を向けると、「世代で(経験に)違いがある」と語り、記者の見解に同意していたようだった。

医務室内の「戦時治療所」の文字に「護衛艦」にいることを実感させられた

 これまでに就役したFFMの1、2番艦は機雷戦を主任務とする掃海隊群に所属しているが、のしろは護衛艦隊直轄の第13護衛隊に配備された。所属が異なる理由を防衛省は「(のしろは)平時の警戒監視などでの活用を優先させた」とする。4番艦の「みくま」も本年度中に三菱重工業から防衛省へ引き渡される予定。最終的に22隻まで増やす計画だ。
 長崎出港から約5時間、夕方近くになると、甲板から佐世保港が見えてきた。被爆地、自衛隊・米軍の拠点、護衛艦の建造。どれも本県そして世界の現実だ。護衛艦が長崎で建造され、佐世保配備となる構図はその象徴に思えた。


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