伝統の力

 7日は高校サッカーの指導者として知られた小嶺忠敏さんの一周忌だった。最期まで現場に立ち続けた名将の姿が懐かしい▲厳しい小嶺監督も天国で「よう頑張った」と褒めているのではないか。サッカーの全国高校選手権で、かつて小嶺さんが率いた国見高が12大会ぶりに出場し、2勝してベスト16に進出。県内のみならず全国のファンを大いに沸かせた▲選手権を制すること6度。丸刈りの選手が鍛え上げた体力と個人技で相手をねじ伏せたかつてのスタイルと異なり、「新生国見」は相手や状況に合わせて戦術を変える柔軟なサッカーを披露した▲華麗にパスをつなぎ相手を崩す技術も持ちながら、強豪相手には分厚い守備で対抗し、ゴール前で選手が次から次に体を投げ出してシュートを食い止めた。敵を知り、己を知る見事な戦いぶりだった▲強く感じたのは勝利への執念。まさに小嶺さんが大切にした精神だ。チームを率いた41歳の木藤健太監督は高校時代に国見でプレー。恩師の小嶺さんには反発し、衝突もしたという▲だが、小嶺さんに教わった「勝負へのこだわり」は、木藤監督から今の選手たちにしっかり受け継がれていた。脈々と息づく伝統は目に見えなくても、いざというときに大きな力となる。「小嶺イズム」は伝統となって生きていた。(潤)

© 株式会社長崎新聞社