冬の主役たち(5) ラグビー女子 憧れの花園に立った長谷部彩音(大分東明3年) 【大分県】

高校ラグビーの聖地・花園のピッチに立った長谷部彩音は、確かな爪痕を残した。高校3年生以下の女子選手から44人が選出され、東西2チームに分かれて対戦する「U18花園女子15人制」の西軍の先発メンバーとしてフル出場した。長谷部は「(44人に)選ばれたことがうれしかったが、実際に花園で楽しくプレーできて最高だった。100点満点、悔いはない」と満面の笑顔で言い切った。

小学5年のときにタグラグビーに触れ、中学からクラブチームの大分ウイメンズでラグビーを始めた。母・さおりさんは「幼い頃から活発で人形遊びなどしたことがなかった。兄の影響でラグビーを始めたけれど、いつも心配だった」と振り返る。親の心配をよそに、けがも恐れないアグレッシブなプレーで突き進む。中学の頃は身長が小さく、選抜チームに選ばれたがリザーブに回ることが多かった。「試合にあまり出られず悔しかった。高校は男子と一緒に練習すれば絶対成長できるし自信がつく」と、大分東明に入学した。

花園で活躍した長谷部彩音

全国で勝つことを目標とする男子と練習するのは想像以上に大変だった。スピードもパワーも桁違い。練習に行きたくないと思ったことは1度や2度ではなかったが、「女子だからと言われたくなかった」と同じメニューをこなした。3年間、男子と一緒に楕円形のボールを追い続けたことで、コンタクトプレーをいとわず、ボールを運び、相手ディフェンスとの接点に素早くサポートに走れるようになった。身長は166cmまで伸び、ラインアウトの際にジャンパーとしてボールをキャッチする役割を担うロックの選手となった。

3年時には一気に才能が花開いた。夏は全国高校女子合同大会の九州選抜チームに選出されて優勝の立役者になると、秋の栃木国体では大分県選抜チームのキャプテンとしてチームを引っ張った。そして、冬には目標としていた花園のピッチに立った。「臆することなく自分らしく輝く」と心に誓い、3年間の集大成のプレーを披露。「アドレナリンが出ていたので疲れもなかったし、痛くもなかった」と、試合後は接触した際のアザも勲章と笑った。「けがだけはしないでくれ」と願っていた父・智幸さんも、この日ばかりは「誇りに思う」と娘の勇姿に胸を張った。

悔いなく3年間を終え、さらなる活躍のステージを求め大学に進学する。長谷部は「まだまだ成長できるし、日本一を経験したい」と目を輝かせた。

大学でも大好きなラグビーを続ける

(柚野真也)

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