世の中に一言もの申す! 長崎県内「成人の日」アンケート

 大人に言いたいこと、ありますか?-。長崎新聞社は9日の「成人の日」を前に、県内の成人式典会場や街角でアンケートを実施した。不満、注文、決意、感謝…。成人に仲間入りして間もない若者たちが、世の中に「一言もの申す!」。

■古い価値観
 8日午後、鮮やかな晴れ着に彩られた長崎市の式典会場前。スーツ姿で長髪を束ねた同市出身の山佐啓斗さん(20)は、気候変動対策に手をこまねく世界のリーダーに一言。「自分たちが住む地球なんだから利害を超えて協力を」。幼い頃からの昆虫好きが高じて佐賀大農学部で学び、将来は環境保護の仕事を志す。ずっと応援してくれる家族には、恥ずかしくて直接言えないけれど「今まで育ててくれてありがとう」。
 今年の式典は県内全市町で従来通りの20歳が対象だが、法的な成人年齢は昨春から18歳に。同市出身の女子大学生(19)は成人年齢を過ぎた実感がまだない。ただ、古い価値観を“アップデート”しない長崎の大人たちへの疑問はいくつもある。「しなくていい苦労や努力を変に持ち上げる」「祖母が家事をしているのに祖父は居間に座っている。両親も同じ」…。それでも東京の大学を卒業後は「長崎に戻って役に立ちたい」と心に決めている。

■耳を傾けて
 「大人」の見え方はさまざま。五島市のスーパーで働く野口愛奈さん(20)は「学生の時はあいさつの大切さを教えられるのに大人になるとしない。自分はしっかりしたい」と接客を通じて思う。環境問題など過去のツケを「大人から押しつけられている」と不満げな西彼時津町出身の林健太郎さん(20)は「人に言うなら自分もやる大人」を目指す。西海市の山本彩華さん(20)は「若者の声に耳を傾けて」と注文する。
 長崎市出身の森祐夢さん(20)は、たばこのポイ捨てやあおり運転をする人を「大人と呼べるのか」と苦言。「成人と未成年は年齢で線引きされるけど、大人って何だろう」。平戸市の道添隼さん(20)は「大人は子どもの延長。いろいろな勉強や経験をして自分の中で『子ども』と『大人』の切り替えをできるのが大人」と持論を披露した。
 県内在住者は尊敬と同時に不満の視線も向ける。諫早市の鳥井夏希さん(20)はカキのお裾分けや自主的な草刈りなど「町を良くしようとする大人」を慕う。一方、地元のJR小長井駅は新幹線とは無縁で「とにかく不便。本数を増やして」。JA対馬に勤める藤井玲志さん(20)も通信網や道路網など「インフラ整備を進めて」と注文しつつ「自然を生かした食べ物は誇り。魅力を日本中に発信したい」と意欲満々。

■先輩の背中
 「大人に不満?ないです!」。そう即答した新上五島町の会社員、松下真人さん(20)はてきぱき働く職場の先輩の背中を追う。建築業で働く東彼東彼杵町の川原剣心さん(20)は現場所長に憧れ「経験を積み、もっと大きな建物を監督したい」と意気込む。島原市の看護学生、金子優希さん(20)が目指す看護師像は「お世話になった整形外科の看護師さん」だ。
 佐世保市の大串澪さん(20)はロシアのウクライナ侵攻が続く現状に「早く戦争を終わらせて。解決に向けてがんばってほしい」と大人に期待する。
 決意表明も。同市出身の七種唯斗さん(20)は「情報通信を勉強してプログラマーやエンジニアになり、社会に貢献したい」。大村市出身の大町尚生さん(20)は発展途上国での農業支援に携わるのが夢。高校ラグビー部で世話になった家族やコーチらに感謝しつつ「自分はまだまだ子ども。お世話になった大人に恩返しするためにも、今度は自分が感謝される側に」と力を込めた。(「成人の日」取材班)

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