もしも、もしかして

 「もしかして」に漢字を当てると「若しかして」。何かを想像する時の「もしも」、可能性があることを表す「もしかしたら」に「若」の字が含まれる▲若い時ほど、未来を想像する「もしも」、可能性をあれこれ考える「もしかしたら」が次々と立ち上る時期はないだろう。きのうは県内の5市2町で二十歳(はたち)を祝う式典があり、各地で代表が夢や抱負を語った▲「私たちにしかできない足跡を」「誰かの背中を押してあげる存在に」「恩返しを」…。覚悟も感じさせる誓いの言葉に、頼もしさを覚えた人は多いだろう▲成人の年齢が18歳に引き下げられ、式典の名称は長崎市が「二十歳のつどい」、佐世保市が「成人式」。いろいろ分かれはしたが、20歳の節目を祝うのは変わりない▲成人したばかりの18歳はいま、受験や就職活動に力を注ぐ。きょうは「成人の日」だが「お祝い」に気が向く時ではないのだろう。では、どうやって、どういう場で、18歳に大人の自覚を持ってもらうのか。社会は宿題を負う▲若い成人への祝辞に代えて、詩人の杉山平一さんが残した「木の枝」という一編を。〈若いときは/背のびをすると/本当に高くなることがあります〉。若(も)しも、若しかして、若しかしたら。想像力と可能性を表す「若」という字が爪先立ちを支えてくれる。(徹)


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