栃木県内で刺症例、初報告 タカサゴキララマダニ イノシシが運搬か

県猟友会足利中央支部の協力で行ったイノシシの捕獲調査

 【足利】足利赤十字病院の島田瑞穂(しまだみずほ)医師(55)らの研究グループがこのほど、県内ではほとんど生息しないとされてきたタカサゴキララマダニによる県内での刺症例を日本衛生動物学会誌で初めて報告した。住宅地に出没するイノシシがタカサゴキララマダニを運んでいるとみられるという。患者は3~10月に増える傾向があるとして、注意を呼びかけている。

 タカサゴキララマダニの成虫は体長5ミリほどだが、ヒトの肌を数日間にわたって刺して血を吸い、1センチほどに膨らむ。血を吸われるだけでは痛みはないが、複数回刺されると直径5センチほどの紅斑を生じることがある。西日本ではヒトや猫に対して致死性の高いウイルス感染症を媒介したケースもあるという。

 島田医師は、院内で診療したマダニ刺症患者の皮膚から除去したマダニの中にタカサゴキララマダニが多く含まれていることに着目し、研究を始めた。2017~19年の3年間で診たマダニ刺症72例のうち9割近い62例がタカサゴキララマダニによるものだった。

 県猟友会足利中央支部の協力により、市内で捕獲したイノシシの体表に多数のタカサゴキララマダニが付着しているのを確認。この3年間に市内で刺されたとみられる59例の受傷地を調べたところ、いずれも渡良瀬川左岸の北部里山地区だったという。

 刺された場合、無理に取り除こうとすると、口器が外れて肌の中に残り、化膿(かのう)することがある。島田医師は「肌に付いて血を吸っているのを見つけたら、自分で除去せず、すぐ受診してほしい」とアドバイスする。

吸血後のタカサゴキララマダニ(島田医師提供)

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