栄枯盛衰の島 タヌキ生き抜く うたげの名残背に浜辺で餌探し

月明かりに照らされた別荘と浜辺に現れたタヌキ=備前市日生町日生、鴻島

 波静かな海。いてつく空に輝く星。島は黒い影を横たえる。午後8時過ぎ、東の空に月が昇り、別荘群が白く輝いた。

 今月上旬、日生諸島の鴻島(こうじま)=備前市日生町日生=を訪ねた。約300戸といわれる別荘が急斜面を覆う光景に圧倒される。「売物件」の立て看板は倒れ、バルコニーは崩落。何年も使用された形跡がないものが目立つ。路肩に放置された車はプレートが外され、こけむしていた。

 浜辺でカメラを構えていると、ゆっくりと動く小さな影。餌を探し求めてか、数匹のタヌキが現れた。

 急増するシカやイノシシと共に、古くからの“住人”だ。バブル景気とリゾートブームの荒波にもまれ、時代につれて変遷する島で生き抜いてきた。フラッシュに映し出されたその顔は、月夜に浮かぶうたげの名残を背に、笑っているかのように見えた。

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