長崎刑務所でモデル事業内覧会 知的障害受刑者の再犯防止へ 司法と福祉連携

刑務官やジョブトレーナーの助言を受けながら作業をする受刑者=諫早市、長崎刑務所(画像は一部加工)

 長崎刑務所(諫早市小川町)に知的障害のある受刑者を集め、特性に応じた処遇を図るモデル事業の関係者向け内覧会が16日、同所であった。社会福祉法人南高愛隣会(同市)の職員が刑務所内で対象受刑者の指導や支援に当たる。同様の取り組みは全国的に例がなく、司法と福祉の連携が再犯防止にどのような効果をもたらすか注目される。
 モデル事業は全国で唯一「社会復帰支援部門」を設けている長崎刑務所が、罪を繰り返す「累犯障害者」の支援に長年取り組む南高愛隣会と協力。九州内の刑事施設から知的障害者(疑い含む)約50人を集める予定で、昨年10月から5カ年で実施している。同刑務所には現在418人が入所し、知的障害者は22人。
 同所によると、モデル事業では(1)特性に応じた作業・訓練・指導を選定して処遇計画を立案(2)処遇計画に基づき訓練・指導(3)在所中に(知的障害者向けの)療育手帳の取得に向け調整(4)息の長い寄り添い型支援を可能にする調整-に取り組む。同会の職員も対象者との面接や指導、就労支援などに当たる。

長崎刑務所の知的障害受刑者 処遇・支援モデル事業

 対象者はビジネスマナーなどを学ぶ一般就労コース、農園芸作業などに従事する福祉的就労コース、和太鼓や絵画を通じて自身の表現を図る福祉サービス利用コースに分かれ訓練を受ける。いずれも歯磨きや洗濯などを実践する生活スキルアップ学習や、自らの行動を変える犯罪防止学習などに取り組む。
 内覧会では犯罪防止学習を視察。同会の職員が講師となり「イライラした時にどう対処すべきか」について話し合った。また、別の場所ではひもに玉結びをつくる作業をしている対象者に、同会職員が「ジョブトレーナー」として一人一人を観察したりアドバイスしたりしていた。
 法務省矯正局が2020年度に実施した特別調査によると、知的障害のある受刑者(疑い含む)は全国に1345人。再犯期間が短く入所回数が多い傾向にあり、特性に応じた対応は矯正施設だけではノウハウが不十分とされてきた。
 同会の田島光浩理事長は「われわれの役割は信頼関係を基盤とし、現在の処遇と良い意味で対立しながら福祉的視点で(受刑者の)人生を豊かにすること」、同所の竹内徹所長は「知的障害のある受刑者の多くは周りの人たちに助けを求めるすべが分からない。再び被害者を生まないためには多種多様な支援が必要だ」と話した。


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