長崎県五島市下崎山地区で15日、国指定重要無形民俗文化財の奇祭「ヘトマト」が3年ぶりにあり、小雨が降る中、締め込み姿の男衆が大草履を担いだり、わら玉を激しく奪い合ったりして、熱気に包まれた。
同地区に古くから伝わる小正月の伝統行事で、無病息災や子孫繁栄、豊漁豊作などを祈願する。
地区の白浜神社で小中学生や若者が奉納相撲をした後、集落の通りで新婚の藤田史織さん(25)と出口海侑さん(21)=いずれも福岡市=が、羽根突きを披露した。
その後、「ヘグラ」と呼ばれるすすを顔や体に塗り付けた締め込み姿の男衆が登場。沿道の見物客の顔にすすを塗り付け、直径40センチのわら玉を激しく奪い合い、綱引きをして盛り上げた。最後は、わらで作った長さ約3メートル、重さ約250キロの大草履の上に次々と若い女性たちを乗せ、「わっしょい、わっしょい」と高く担ぎ上げた。
普段静かな集落は、男衆のかけ声や見物客の歓声などが入り交じった。下崎山町の中尾シゲ子さん(78)は「ヘトマトを見て一年が始まる。久しぶりににぎわって良かった」と笑顔。
祭りは、新型コロナの影響で2021年から2年続けて神事のみ行うなど規模を縮小。今回も流行「第8波」の状況を見極めながらの開催となった。行事をつかさどる「御幣持ち」の山内清一さん(43)は「崎山から元気を発信したかった。とても盛り上がり皆さん楽しみにしていたと思う。早く平穏に暮らせるようになってほしい」と語った。