長崎の伝統行事「精霊流し」について研究している長崎市長崎学研究所元所長の土肥原弘久さん(65)が、伯父で郷土史家の故越中哲也さん(享年99)を乗せた伊良林1丁目の「もやい船」の製作や、自身との関わりをまとめた「令和四年の長崎精霊流し 伊良林一丁目催合(もやい)船と伯父・越中哲也」を自費出版した。
土肥原さんは2015年ごろから、長崎の精霊流しについて研究。20年からは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた精霊流しの記録を本にしており、3冊目。
昨年は3年ぶりに行動制限がないお盆となり、県内各地で初盆を迎えた故人の霊を西方浄土へ送り出す精霊流しが催された。越中さんと土肥原さんの地元・伊良林1丁目自治会は、越中さんら5人を送るに当たり「越中先生ゆかりの船」として、わらと竹を使った昔ながらの船を造った。書籍では、スケジュールや製作過程、当日の動きを写真付きでまとめた。
越中さんは土肥原さんの母の兄にあたる。最終章では「身内として書き残しておきたい」と、思い出や郷土史家としての活動を紹介している。土肥原さんは「長崎の歴史について客観的な目線も必要だが、伯父は知識だけでなく長崎人の心を伝えていた。その姿勢を見習って次の世代に記録を残し、手渡したい」と語った。
A5判、150ページ。2千円。好文堂書店(浜町)などで販売中。