バイデン大統領を待つ

 核兵器禁止条約が発効してから、きょうで2年。だが、臆面(おくめん)もなく核の脅しを振りかざすロシアや北朝鮮の現実があり、「核兵器がない世界」の理想はますます遠のいているように見える▲核使用を押しとどめ、核廃絶の流れを取り戻すきっかけになれば、と願う。バイデン米大統領の長崎訪問だ。5月のG7広島サミットに合わせての来崎が検討されているが、先日の岸田文雄首相との会談では特段やりとりはなかったという▲長崎の被爆者4団体などは先日、バイデン氏に原爆投下が誤りだったと認めるよう求めるアピールを発表した。被爆者には謝罪を求める声もある▲体の中まで焼かれ黒焦げになり息絶えた幾万の人々、原爆後障害で長年の苦しみを背負わされた人々を忘れることはできない。被爆者の思いは当然だろう▲長崎の被爆医師・故秋月辰一郎氏は、こうつづった。「私のいつもゆきつくところは、原子爆弾を投下したアメリカへの憤りではなく、この悲惨さを知りながら、あえてこれを行った人間の心の恐ろしさであった」(長崎原爆記)▲二度と核兵器を使ってはならない。長崎を最後の被爆地にする-。たとえ謝罪の言葉を口にできなくても、長崎から世界へ力強いメッセージを発してほしい。バイデン氏が必ず来てくれると信じている。(潤)


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